海外子会社からの配当

海外子会社(基本的に出資比率25%以上で保有期間6カ月以上、但し租税条約により異なる場合あり)からの配当については、95%が益金不算入になります。これは、既に子会社で負担した法人税に追加して、その配当金についても日本で法人税を負担する事になると2重課税となるため、それを排除する趣旨となります。従って、配当金の支払いが損金となるような国からの配当については益金不算入とはなりません。そして、益金不算入とされた配当についての源泉税については、外国税額控除を受ける事も、損金算入することも出来ない事になります。

会計上においては、連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針によると、通常、親会社は子会社の留保利益を回収するものであるので、原則として認識することとする。(第30項)となっており、将来の配当により親会社において追加納付が発生すると見込まれる税金額、つまり益金算入額の5%部分に法定実効税率を乗じた額と配当に対して課される外国源泉所得税について繰延税金負債に計上する(第35項、36項)事となります。

但し、親会社が当該子会社の利益を配当しない方針をとっている場合又は子会社の利益を配当しないという他の株主等との間に合意がある場合等には、配当をしない方針である以上、配当に伴う課税関係が生じない可能性が高いため、繰延税金負債の計上を要しません。(第35項)

棚卸資産の評価損

会計上は棚卸資産の評価に関する会計基準により、収益性の低下により投資額の回収が見込めない場合には棚卸資産の簿価を切り下げなくてはいけません。一方で、税務上は変更承認申請を提出する事により低価法を適用する事が出来ますが、申請書を提出すれば会計上評価損としたものが税務上も必ず認められるかと言えばそう単純ではありません。

例えば会計上は滞留年数の区分によって、切り下げの割合を画一的に決めて簿価切り下げの処理をしていたとします。しかしながら当然この取り扱いによった切り下げ後の簿価は、各商品毎に時価を見積もった訳では無いため、その切り下げ後の簿価を疎明する事は困難となります。

つまりこういった場合、税務上においては例え申請をしていたとしてもその切り下げ額について後々調査等で指摘を受けて損金算入が認められない可能性が出て来るので、税務上の取り扱いについては注意が必要です。

業績不振の会社

今の外部環境では、赤字の会社も多いと思いますがコロナに関係なく業績不振の会社も当然数多あり、やはりそういった会社に関わらせて頂くと、外部の目から見て個人的に色々感じる事があります。個人的に感じた事ですが、以下のようなところです。

  • 雰囲気がどこかギスギスしていて前向きな雰囲気をあまり感じ無い
  • 収支についての意識が現場まで行き届いていない(現場の感知するところでは無いと思っている)
  • 会議を開いても足を引っ張るような意見しか出ず、進行もなかなか進まない
  • 旧態依然としたやり方を変える事にすごく抵抗がある
  • やると決めても実行までの時間がすごくかかり、都度確認しないと行われない
  • 顧問税理士はいるにはいるが相談に行くという能動的なコミュニケーションしか行われていない

そういった会社は、過去に大きく成功した会社でも、新しいことを検討する、取り入れる事を避け、人材教育や採用についての長期的プランが無くそうなってしまうのかも知れません。私自身、お金という会社にとって貴重なリソースを使って契約を頂いているという認識を強く持つと共に、うちの会社に当てはめてみてそういった状況になる可能性も大いにある、もしくは気づかないうちに既になっている可能性もあると思わないといけません。

関連当事者との取引に関する注記(子会社からの配当の受取)

関連当事者との取引に関する注記は連結財務諸表を作成している会社の場合、財務諸表等規則と会社計算規則から、有価証券報告書においては連結財務諸表の注記として、計算書類においては個別注記表において開示する事が必要となるため、任意で開示しない場合は有報(連結)と計算書類(単体)で開示内容が異なってくるかと思います。

ここで、連結子会社との取引は連結上は相殺消去されるので、連結上の注記では出てきませんが、計算書類での開示では個別のため、子会社との取引も基準に引っかかれば開示が必要となります。そして、表題()内の配当金を子会社から受け取った場合の開示については、関連当事者の開示に関する会計基準において「配当の受取りその他取引の性質からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引」は開示対象外とするとなっており、会社法上もこれをしん酌する事になると考えられます。

しかしながら、他社例を見ていると個別注記表において子会社からの配当の受取を注記に記載している会社もあるようです。これは積極的開示というよりは、注記の表下の注書もされているのを見ると、大株主である親会社からの意向で配当がされるという事が一般の取引と同様であることが明白であるとは言えないため、記載しないといけないだろうという趣旨での記載なのでしょうか。そうだとすると逆に金額基準等の他の基準に引っかかった場合で、開示対象外となる取引条件が一般の取引と同様であることが明白な配当の受取とはどういう場合の配当の受取があるのかが気になります。

四半期特有の会計処理(税金)②

以前に四半期特有の会計処理の税金計算について記載しました。見積実効税率を用いて税金計算を簡便的に行う方法となりますが、ここで、税前利益がマイナスとなる場合、つまり税金費用がマイナスとなる場合の相手勘定科目について議論となりました。

四半期会計基準の第14項では、「四半期貸借対照表計上額は未払法人税等その他適当な科目により、流動負債又は流動資産として表示」と記載があるので税金費用がプラスの時には未払法人税等を使うという事になるとは思いますが、マイナスの時については明確に記載がありません。

この点、「その他適当な科目」がポイントになってくるかと思うのですが、「中間財務諸表等における税効果会計に関する実務指針」の第20項において、「資産に計上される場合は、投資その他の資産の区分に繰延税金資産などその内容を示す科目をもって表示する。」と記載がある(お恥ずかしながら知りませんでした。)ので、これを参考にするのが一番良いのではという結論に達しました。まあ、確かに繰延税金資産が妥当なのでしょうね。

外貨のれん

外貨建取引等の会計処理に関する実務指針の第40項によれば、在外子会社を連結する場合に、のれんについては原則として支配獲得時に当該外国通貨で把握する。となっており、決算時においてのれんの残高については決算時為替レート、償却額については期中平均レートにて換算する旨記載されています。また、当該のれんについては、全て親会社持分に係るものであり、非支配株主持分への振替は行われません。

これは、平成20年に改正されて上記の内容になったようですが、理由としてはのれん=超過収益力は当該在外子会社に帰属する他の資産と同じだろうという事で他の資産と同様に決算日のレートで換算するべきでは等の背景があったようです。

因みにこれも第40項に記載の通りですが、償却額については期中平均レートを使用するので為替換算調整勘定が償却額の適用レート差と期首と期末の決算日レート差の両方から生じる事となります。のれんの減損をした場合も償却額と同様のレートとなり、当該レート差からも為替換算調整勘定への影響が出てくると考えられます。

KAM(監査上の主要な検討事項)

KAM(監査上の主要な検討事項)についての監査報告書への記載は、2021年3月期より強制適用になりますが、経営財務の3465号によると2020年3月期の有価証券報告書にて、44社(2019年12月期で他1社あり)の早期適用が確認されているようです。

強制適用になれば、ざっくりいえば監査報告書において、監査人が監査において主要な検討事項とした内容や決定理由、当該事項への対応について記載が必要になります。これまでほとんど無限定適正意見であまり代わり映えのしない監査報告書でしたが、この制度によって監査報告書の情報提供価値がより上がるように思います。

早期適用した会社をざっと見た感じではやはりのれんの評価や固定資産減損、引当金等の見積り関係についての記載が目につきました。そのほかでは基幹システム移行リスクに関しての記載なんかもありました。割と自由な感じが現段階ではするのですが、まだこの経営財務が出た時点で45社なのでゆくゆくはある程度記載内容はスタンダードな形が出来て来るんだろうとは思います。

B/S(貸借対照表)残高の妥当性

B/S残高の妥当性と表題に記載しましたが、B/Sの科目の残高については、見積等が絡まなければ、いわゆる監査要点でいうところの実在性や網羅性、権利と義務の帰属であったりといったところが一般的に担保されていなければなりません。多くの中小企業会計においても、B/S残高についてある程度定期的な検証を行っていれば上記の点は確認されているかと思います。

しかしながら、P/L(損益計算書)を重視するあまりB/Sを検証していない等、B/Sを軽視する会社は割とあるかと思います。そういった会社は知らず知らずのうちにB/Sが荒れていき、科目残高が妥当と言えるかどうかわからなくなってしまいます。

そうなると、B/Sが合っているのかどうなのかは感覚的なものになってしまいますが、そういった会社では「でもP/Lは確認しているから大丈夫」という答えが返ってきたりします。ここで、配当の支払等を除けば、単純にB/Sの純資産の増加(=資産-負債)がP/Lの利益になる事を考えれば、B/Sが妥当かどうかわからないのにPLの数字が大丈夫と言えるのか甚だ疑問に思います。

四半期特有の会計処理(税金)①

四半期決算においては、年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益に当該見積実効税率を乗じて計算する方法によることができ、また、前年度末に計上された繰延税金資産及び繰延税金負債の各四半期毎の見直してにあたっては、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、簡便的な方法によることも認められる。( 四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針第18項 )とされています。

そして、上記の簡便的な方法というのは、経営環境や一時差異等の発生状況等について著しい変化、大幅な変動が無い場合には、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングを利用することができ、 著しい変化、大幅な変動があれば当該影響を加味した将来の業績予測やタックス・プランニングを使用するというものです。 ( 四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針第16項,17項 )

平時であれば、永久差異や税額控除等を考慮した年間の見積実効税率を四半期税前利益に乗ずる形で、割とサクッと四半期の税金計算を行っている会社もあるかと思いますが、今回は監査上の留意事項その6に記載の通り、コロナの影響により著しい変化、大幅な変動が経営環境にも一時差異等にも生じている会社は多いかと思います。そうなるとこの四半期特有の税金計算も、コロナ影響下では平時のようにはいかないでしょう。

コロナ関連での特別損失

4月22日に日本公認会計士協会から、新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その4)が出ていますが、そこでは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために政府や地方自治体による要請や声明等により、被監査企業が店舗の営業を停止又はイベントの開催を中止したときに発生した固定費やイベントの開催の準備及び中止のために直接要した費用及び工場が操業を停止又は縮小したときの異常な操業度の低下による原価への影響について、臨時性があると判断される場合が多く、特別損失の要件を満たしうるものとして取り扱うことが出来るとされています。

3月決算の会社であれば、前期末よりも6月末の1Qにおいて当該特損を計上する会社が多く出そうな気がしますが、既に特別損失として損益計算書に計上している会社もあります。勘定科目としては、「感染症拡大に伴う損失」や「新型コロナウイルス感染症による損失」といった科目名が使われているようです。

但し、留意事項にも記載の通り特別損失に持っていけるのは、あくまで新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための政府や地方自治体による要請や声明等に関連したものである必要があるため、注意が必要です。