欠損填補

無償減資でも書きました減資により欠損填補を行う際の手続きに関してですが、資本金の取崩しなのか資本準備金の取崩しなのか、欠損の範囲内の取崩しなのか否か等によっても手続きは変わってきます。

まず資本準備金の取崩しに関しては、会社法448条、449条により株主総会の普通決議(一定の場合は取締役会決議)、債権者保護手続きが必要となりますが、法務省令で定められた方法で算定された欠損の額の範囲内であれば債権者保護手続きも不要となります。

資本金を取り崩して欠損填補を行う場合には原則として特別決議が必要ですが、欠損の範囲内の取崩しであれば定時総会の普通決議でも可能です。また、資本準備金と異なり、欠損の範囲内の取崩しであっても債権者保護手続きは必要となります。(会社法309条1項、449条)

因みに会計上は資本利益区分の原則により、欠損の額を超えた取崩しを行ったとしても利益剰余金をプラスの値にする事は出来ず、資本内での取崩しとなります。因みに欠損の範囲内での補填が認められる理由としては「将来の利益を待たずにその他資本剰余金で補うのは、払込資本に生じている毀損を事実として認識するものであり、払込資本と留保利益の区分の問題にはあたらない」という考えからのようです。(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 第61項)

欠損金の繰越制度

2020年6月19日の欠損金の繰戻還付(https://kawai-tax.info/wp/wp-admin/post.php?post=293&action=edit)でコロナ特例で繰戻還付の対象企業の範囲が時限的に広がっている旨の記載をしましたが、そもそもの欠損金の繰越制度についての備忘です。

単年度で所得が赤字であった場合でも、翌期以降において所得が黒字であった期において、繰り越された欠損を控除して良いという制度ですが、繰越可能な期限については

  • 平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金⇒9年
  • 平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金⇒10年

となっており、中小法人等以外であれば所得金額の50%しか控除出来ないという制限がありますが、資本金1億円以下の中小法人等(100%子法人等を除く)であればそのような制限は無く控除可能です。

他勘定振替高

他勘定振替高は、従来であれば売上原価として売上に対応する費用となるべき仕入が、研究開発や見本として使われた場合や、例えば災害等の異常な原因により使用される事無く大量に廃棄となった場合等に、売上と対応するべき売上原価から、販売費及び一般管理費や特別損失等の異なる損益区分に振替えるために使用される勘定科目です。

仕入であれば仕入高を直接貸方減額して上記の異なる損益区分へ振替を行ったとしても、利益計算上でおかしなことに直接なる訳では無いのですが、それをしてしまった場合、販売管理システムで認識している仕入の計上額と、会計システムで計上されている仕入の計上額について整合性が取れなくなってしまったりといった管理面で不都合が生じてしまう事が起こり得ます。

またそれは当初売上用、研究開発用と言った具合に厳密に分けて仕入を行っている訳では無く、一度仕入として処理した中から研究開発で一部使う、見本として使うといった事実を表すためということもあります。

譲渡制限付株式(実務対応報告第41号)

2020年1月31日付の譲渡制限付株式(https://kawai-tax.info/wp/wp-admin/post.php?post=140&action=edit)で書きました処理方法ですが、2021年3月1日以降に生じた取引について、実務対応報告第41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」にて取り扱いが明確化されました。

これまでの処理としては、上記リンクで記載の通り、「譲渡制限付株式を例えば役員に譲渡制限付株式を新株付与した場合(未達時は会社が無償取得)には、会計上は「前払費用××/資本××」という処理を行い、基本的に譲渡制限期間を通して前払費用を費用化していくという処理になります。 」という処理をしていたかと思いますが、実務対応報告ではそもそも発行時の処理から異なります。

実務対応報告では、期間を通して費用化する点では変わりませんが、付与時の処理としては新株発行での付与の場合では行わず、自己株式の付与の場合は「その他資本剰余金××/自己株式」という処理を行う事になります。

また、費用化する際については、新株付与の場合は「費用××/資本××」自己株式付与の場合は「費用××/その他資本剰余金××」となり、よって未達没収時においては新株付与の場合は無償の自己株式の増加、自己株式付与の場合は付与時の簿価ベースで「自己株式××/その他資本剰余金」という対応分を戻す処理を行うようです。

地方税 事業所

本社と異なる市町村に支店や営業所、事務所、店舗を設けた場合には、新たに設置届を都道府県税事務所や市役所等に提出しなければいけません。

上記の届出の提出が必要となる場合としては、①人的設備,②物的設備,③事業の継続性の三要件を満たす場合となります。①については正規従業員以外でもアルバイトやパートの方等が事業所にいれば該当し、②については自己所有か否かは関係無く、賃貸していても事業を行うのに必要な設備があれば該当します。③については2,3ヵ月程度の一時的な事業の用に供される現場事務所等は該当しません。

上記から、例えば多店舗展開での直営店舗の一部がFC店舗へ変更となった場合には、FC店舗の運営法人側での事業所となり、フランチャイザー側では基本的には事業所に該当しなくなると考えられます。

教育訓練 受講レポート

雇用調整助成金の審査ハードルが上がっているようです。以前はそれほど指摘が無かった箇所についても修正や追加で書類が必要になったりと、直接労働局の方に聞いたところでも厳しくなっているようです。

休業だけでなく、教育訓練を実施した場合にも雇用調整助成金が受けられることは前にも少し触れましたが、その場合には研修等の教育訓練を行ったという実績を示す受講レポートを受講した従業員本人に記載して貰い、提出する必要があります。

今回受講レポートの内容について指摘がありました。話を聞いている限りでは先方の方が言われるのはもっともだと思える内容で、受講レポートとしてはその研修等により何を新たに学べたのかや、それがどう会社の生産性向上に寄与するのか等についても触れている必要があるというものです。

言ってみれば従業員に研修をして支払った給料をお国が補填しますよという事なので会社も受講した従業員もそれ相応のエビデンスを出すのは当然という事でしょう。

監査上の留意事項(その7)

2021年3月2日に新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その7)が日本公認会計士協会から発出されています。

「本留意事項は、留意事項(その2)において示した会計上の見積りに関する監査上の留意事項について、現在も依然として留意すべきことを改めて周知するためのものである。」とされている通り、企業が置いた一定の仮定が明らかに不合理である場合を除き、最善の見積りを行った結果としての乖離は「誤謬」に当たらない。という事や、過度に楽観的でも悲観的でも駄目だという点に関しては昨年に発出された留意事項と変わらないと感じます。

加えてとして、新型コロナウイルス感染症の拡大が企業の業績や財政状態に与える影響が業種や企業によって様々であること等から、経営者及び監査役等と通例よりも注意を払って適時かつ適切なコミュニケーションを図るよう求めるとされています。

被用者保険の適用拡大

令和2年5月29日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、6月5日に公布されましたが、これにより社会保険や厚生年金の適用対象となる範囲が拡大されます。

ざっくり言えば、①週労働時間が20時間以上②月額賃金8.8万円以上を満たす従業員について、これまで従業員500人超の規模の会社では被用者保険の加入義務有だったのが、令和4年10月から従業員100人超(令和6年10月から50人超)の規模の会社で加入義務有となります。

また、従来は上記①②に加えて1年以上の雇用見込みという要件もありましたが、当該要件は撤廃され、フルタイムの被保険者と同様、2か月超の雇用見込みの場合に適用対象となります。

そして、従来であればまずは2ヶ月以内の雇用契約を結んで社保の加入については一旦様子見としていたような会社も多いかと思いますが、この2か月超の雇用見込みについても、契約書に更新される場合がある旨の明示がある場合やこれまで実績として更新された実績がある場合は原則として当初から適用となるようです。

適用範囲が拡大される場合の影響としては、所得税との絡みである程度限られるような気がしますので、特に派遣会社等はどちらかと言えば2か月超の雇用見込みの影響の方が大きいんじゃないかと思っています。

続・市街地価格指数

3月12日に書きました「市街地価格指数」(https://kawai-tax.info/wp/wp-admin/post.php?post=542&action=edit)において、取得した時期が遠い過去等の理由で取得価額が分かる資料が無い場合の不動産の取得費を市街地価格指数を用いて計算する手法ですが、その後自分で調べたりベテランの税理士先生に話を聞いたりしてある程度使い方等が分かりましたので不十分かも知れませんが備忘します。

  • 当然の事ながらあくまでまずは当該関連資料(当時の仲介料、借入金関係資料、納税者の手控え等)から実額の把握に努めるのが先
  • 購入当時の固定資産税評価額等他の情報と併せた使い方が基本的に必要であり、市街地価格指数を使って算出した数値をそのまま使うのは無理がある
  • 一般的に昭和時代の固定資産税評価額は実際の時価との乖離額が大きいので注意(時価より相当低い)
  • 他に何も取得についての根拠資料が無くても取得価額について納税者の記憶がある程度あればその補足資料として使える可能性はある
  • 実務的な対応として、推定値を若干保守的(低め)に考慮するのも1つの方策

といった感じでしょうか。

会社法ひな型改訂

経団連公表の会社法のひな型について2016年以来の改訂がされたようです。「(改訂版)公表にあたって」では、2019年12月の会社法改正に伴い、会社法施行規則等が改正されたこと、「時価の算定に関する会計基準」「収益認識に関する会計基準」「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の策定に伴い、会社計算規則が改正されたこと等から、所要の修正を行いました。と書かれています。

上記のような会計基準が出たことに伴って注記項目が増えたり、記載内容が変更となったりといった計算書類部分での変更もありますが、事業報告部分での変更もあり、事業報告部分では、「事業年度中に会社役員(会社役員であった者を含む)に対して職務執行の対価として交付された株式に関する事項」、 「補償契約に関する事項」、「役員等賠償責任保険契約に関する事項」、「業績連動報酬等に関する事項」等が新設されています。

上記の「事業年度中に会社役員 (会社役員であった者を含む) に対して職務執行の対価として交付された株式に関する事項」はあくまで事業年度中に交付された場合が対象となり、事前交付型の譲渡制限付株式は制限解除がされていない場合でも交付されていれば記載の対象となるとの事です。