退職所得とふるさと納税

退職所得があった場合のふるさと納税についてですが、一部の例外的な方を除き、一般的に効果が全くないわけではありませんが、限定的となります。

まず、住民税の道府県民税については地方税法50条の2(退職所得の課税の特例)において、「当該退職手当等に係る所得割は、第三十二条、第三十五条及び第三十九条の規定にかかわらず退職手当等に係る所得を他の所得と区分」とあります。

そして、地方税法37条の2(寄附金税額控除)においては、「第三十五条及び前条の規定を適用した場合の所得割の額から控除するものとする。」とあるので、第35条(所得割の税率)から除かれている退職所得については控除不可となります。市町村民税にも同様の条文があるので住民税からの控除は出来ないことになります。

一方で所得税に関しては一切出来ないわけではないですが、控除される場合というのは、給与所得等の他の所得で控除しきれなかった場合等になるため、冒頭の通り効果は限定的と考えます。

自宅を途中から事務所兼用にした場合

持ち家を事務所として使い始めたという場合においては減価償却費を計算し、事業で使っている割合に応じて費用計上が可能です。その際の償却計算に関しては次のような形になります。

まず業務の用に供した日におけるその資産の未償却残高を計算します。計算方法としては、所得税法施行令第135条で「当該業務の用に供した日に当該資産の譲渡があつたものとみなして法第三十八条第二項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)の規定を適用した場合に当該資産の取得費とされる金額に相当する金額を同日における当該資産の償却後の価額として計算する」とあり、実際の計算は所得税法施行令第85条に従い、旧定額法を用いて耐用年数を法定耐用年数の1.5倍とします。また、業務の用に供されていなかった期間に係る年数に1年未満の端数があるときは、6か月以上の端数は1年とし、6か月に満たない端数は切り捨ててその期間の償却費を計算し、取得価額から差し引いて未償却残高を計算します。

上記により算出した未償却残高について、事業用の資産として減価償却を行う事になります。ここで、平成19年4月1日以降に取得した自宅の場合には旧定額法ではなく新定額法で償却をする必要がありますので注意が必要です。

社員旅行

会社で実施する社員旅行は無条件に福利厚生費として費用化出来る訳ではなく、要件から逸脱した場合には従業員への給与としてとり扱われる可能性もあります。国税庁のタックスアンサーによれば、旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追求の趣旨を逸脱しないものであると認められることに加えて、①旅行の期間が4泊5日以内であることと②旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であることを満たせば、原則として参加者の給与としなくて良いとされています。

ここで、タックスアンサーの参考事例で、4泊5日で参加率100%、使用者負担が1人当たり10万円の旅行については、「旅行期間・参加割合の要件及び少額不追求の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよい」とされているため、その他の旅行の条件も含めて総合的に勘案し判定する必要はありますが、その結果当該事例内であれば大丈夫かと考えられます。

一方で平成22年の公表裁決事例においては、1人当たり約24万円の2泊3日の旅行について、「少額不追求の観点から、強いて課税しないとして取り扱うべき根拠はない」として給与とされた事例もあります。

1人当たり10万円を超えると画一的に給与と取り扱う事になるわけではないですが、注意が必要です。