自己都合退職

従業員の側からの意向で退職する場合には、基本的には自由意志で退職出来ますが契約形態の違い等により一定の制限はあります。

無期雇用であれば民法第627条により解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する。となっていますので、退職理由がパワハラ等で無い従業員の一方的な都合の場合、法的には2週間前に伝える事が最低限必要になります。

有期雇用の場合にはやむを得ない事情が無く、就業規則にも特段記載が無いような場合には満了前に退職する事は出来ませんが、1年を超える雇用契約の場合で入社して1年経過後であれば自由に退職出来ます。(労基法第137条)

つまり、従業員の側からの意向で退職する場合であっても今日で辞めますみたいなことは基本認められず、上記の要件にしても就業規則で例えば1ヶ月前までに言って下さいとあればそれは社会人として当然守る必要があります。

とは言え以前にも書いた、いわゆる飛んでしまう人なんかは会社に伝える事も無くいなくなってしまう訳で、会社としては泣き寝入りする事がほとんどになってしまいます。ましてや長期に渡って入社日から休み続けて自分からは退職を言い出さず、会社の側から就労する気があるのか聞かれて初めて辞める事を仄めかす人なんかはより厄介です。そういう人達は会社の人事の方がどういう思いをするのかまで考えずにそういう事をするのでしょうが、上記の法的な要件を満たせなくても、逃げずにせめて自分から辞める旨を伝える位はしようよ、と思う次第です。

派遣料と外形標準課税

事業年度終了日に資本金が1億円を超えるような大きい規模の株式会社は法人の所得を基準とする事業税のみでは無く、資本金等や付加価値などを課税ベースとする外形標準課税が事業税の一部として課されます。

そして、この外形標準を構成する付加価値の中には報酬給与額が含まれ、この報酬給与額には自社の直接雇用の社員へ支払う給与のみでは無く、派遣元会社に支払う派遣料の75%も含まれます。

この75%というのは派遣料にはマージン等が乗っており、派遣料の全てが派遣スタッフへの給料では無いからなのですが、実際には派遣料の75%が派遣スタッフの給料になっていることはあまり無いのではと感じます。(実際には60%~70%の間位じゃないでしょうか。)それは派遣会社は派遣料の中から、派遣スタッフへの給与のみでは無く、社会保険料、間接費等の経費も捻出しているからです。当然マージン分も入ってますので、25%の中から給与以外をというと正直かなりきついかなと、そう思う訳です。

資産除去債務

資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生 じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。と会計基準で定義されています。

例えば不動産を賃借して内部造作を行った場合の契約終了時の原状回復の義務のようなものが上記の法令又は契約で要求される法律上の義務にあたりますのでそのような場合、資産除去債務の計上が必要となります。そして、負債計上した資産除去債務については見積り計上となりますので、当該見積り額については実際の義務履行に際しての実際の撤去費用とぴったりと一致する事はまず無いかと考えられます。

そして当該差額が生じた場合には会計基準の第15項において、原則として、当該資産除去債務に対応する除去費用に係る費用配分額と同じ区分に含めて計上する。とされていますので、資産除去資産の償却額と同様の区分に差額も計上するのが原則とされています。但し、例外として第58項において、当初の除去予定時期よりも著しく早期に除去することとなった場合等、当該差額が異常な原因により生じたものである場合には、特別損益として処理することに留意する。とあり、例外として特別損益として処理する事になる可能性も言及しています。この著しく早期に除去という一例は、時の経過による資産除去債務の調整が進んでいない事が主な要因として差額が発生した場合という意味なのでしょうか。因みにこの異常な原因についてはそれが見積りの誤りに基づくものであれば特別損益では無く、過年度遡及修正の対象になりますので見積り誤りは含まれない事に留意が必要です。

減価償却不足額

固定資産の減価償却をする場合に、会計上の償却費と税務上の償却費と異なる場合があります。例えばそれは、会計上の償却費はその固定資産の実態に見合った耐用年数を設定して行い、税務上の償却費は法定の耐用年数を使用しないといけないために耐用年数が異なる事により生じる事になります。

ここで、多いケースとしては会計上の償却費>税務上の償却費という形かと思うのですが、この場合は償却超過額となり、翌期以降に超過額が繰り越されたうえで、税務上の償却費>会計上の償却費となった期において、その差額か超過額かどちらか小さい額が税務上の損金となる事になります。

逆に会計上の償却を行わなかった場合のように、税務上の償却費が大きくなった場合は償却不足額が発生する事になります。その場合には上記のように償却超過額がある場合にはその範囲で損金算入となりますが、超過額が無い場合や超過額を超える不足額となった場合には、超過額発生時の場合のように翌期以降で超過額が発生したとしてもそれに充てて損金算入する事はできません。しかしながら、永遠に損金に出来ない訳ではなく、除却した場合や耐用年数経過後には損金算入する事が出来るようになります。

使用人兼務役員の賞与の支給時期

役員に賞与を支払う場合に損金として認められるためには事前確定の届出が必要となり、その届出に基づいた支給が必要となりますが、使用人としての地位も兼ねる使用人兼務役員に対して支払う使用人としての賞与についての注意点です。

それは、支給時期についてです。法人税法施行令第70条第3号で使用人兼務役員の使用人としての部分に対する賞与で、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものの額は損金不算入となる旨の記載があり、法人税法基本通達の9-2-26で、使用人兼務役員の賞与を他の使用人の賞与支給時期に未払金として経理処理したうえで他の役員への給与の支給時期に支払ったような場合が「他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したもの」の意義として記載されています。

つまり、資金繰りの都合等から一旦未払金として計上しておいて、後で資金繰りの余裕が出た時に払ったとしても、使用人兼務役員への賞与は損金として認められないという事になり、税務上デメリットとなるというリスクがあるので注意が必要です。

ひとり親控除

令和2年分の確定申告から新たな所得控除としてひとり親控除(所得控除額35万円)が設けられています。これにより従来の寡婦控除の「特別の寡婦」と寡夫控除がひとり親控除という扱いとなります。そして、ひとり親控除の要件を満たす場合は、寡婦控除では無くひとり親控除を受ける事となります。下表は財務省ウェブサイトからの出典です。

ひとり親控除の要件となる人は、原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていないこと又は配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の三つの要件の全てに当てはまる人です。

  1. その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと。
  2. 生計を一にする子がいること。
    この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。
  3. 合計所得金額が500万円以下であること。

寡婦控除と違ってひとり親控除は元々の婚姻関係があった事は要しないので、恩恵を受けられる人も増えるかと思います。

テナント立ち退き時の内部造作

借りている建物にテナントが内部造作を施工した場合、一般的には立ち退き時にテナント側で原状回復を要する契約となっている事が多いかと思います。一方で後継テナントとの関係上、貸主の都合で原状回復をせずとも退去出来るケースも中には出て来る可能性もある訳ですが、その時の内部造作についての課税関係についてはどうなるのでしょうか。

まず、借主側では貸主への贈与、寄付金扱いになるのではという点がありますが、この点、税務通信3434号でも触れられていますが、借主側からすると撤去費用を負担せずにすむという経済合理性があるため寄付金認定とされる可能性は低いだろうとされており、他の書籍等でも廃棄損として損金算入可能だとされています。

一方で貸主側では内部造作について受贈益となるのかという点があります。これについては、契約上は原状回復義務が借主側にあるにも関わらずそれを免除した形にしたうえで内部造作を引き継ぐ、という事は貸主にとってそれは価値ある資産を譲り受けた形となるのでやはり受贈益になるのではないかと考えます。