貸付金に変更した売掛金の貸倒に係わる消費税

税務通信3593号で私自身にとってタイムリーな記事がありました。表題のとおり、売掛債権が滞留した場合に準消費貸借契約に切り替えて貸付金として契約をし直す場合があると思いますが、その後貸倒れとなった場合の消費税の処理についてです。

そもそもの前提として売掛債権が貸倒れた場合には、当該売掛債権に含まれている消費税額について控除が出来、一方で貸し付けたお金に関しては貸倒れたとしても消費税の調整は行われません。

それでは元々売掛金だったものが貸付金になって貸倒れとなった場合はどうなのかという事ですが、結論から言うと消費税の調整は行われず控除できないです。

準消費貸借契約等の契約を結ぶ段階で売掛債権は一旦無くなるので、当然といえば当然ですが、売掛金から貸付金に変わったと考えるよりも、一旦回収してすぐに貸し付けたと考えるとすんなり理解出来るような気がします。

創業者への役員退職金

税務通信の3595号で創業者である元代表取締役に対して⽀払った役員退職給与の中に「不相当に⾼額な部分の⾦額」があるか否かを巡り争われた事件についての記事がありました。

国が抽出した同業類似法⼈3社の平均功績倍率「1.06」に基づき算定した金額と、支払われた金額とに大きな乖離があったという事のようですが、会社側は功績倍率「8.00」で支払っていたようです。

確かに1.06倍と8.00倍では全然違うのですが、法人税法施行令70条2項に「当該役員のその内国法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額」とある以上は平均功績倍率を使う事が合理的となるのでしょう。

私の認識的には退職時の役職が例えば社長であれば3倍という事が頭にありましたが、会社の8倍という基準は高すぎたとしても、創業社長で会社を大きくされた方の功績倍率なので心情的には 1.06倍は低すぎるんではないかと感覚的には思ってしまいます。

確定申告期限延長①

新型コロナウイルスの影響で確定申告期限が所得税も消費税も4月16日に延長されました。東日本大震災の時も一部地域は延長されたようですが、今回は全国が対象となっています。

延びて嬉しいという方もいるかとは思いますが、個人的にはあまり引っ張っても次に3月決算の会社が待っていることを考えればいずれにしても早く終わらさないとというところです。

4月5月になると3月決算の法人の決算申告業務が本格化しますので影響が長引けば法人についても何らかの措置が施されるんでしょうか。

輸出免税制度に係わる消費税還付

税務通信の3593号で東京地⽅裁判所において,中国⼈観光客らに免税販売を⾏った会社(原告)と国との間で,約75億円の還付申告の是⾮を巡り争われている事件についての記事が載っていました。

消費税増税後、不正事案が増えているようですが、考えてみると法人税であれば脱税をしたとしても払わなくて良い税金を払わなくて済むという事に留まりますが、消費税の場合には例えば架空の経費計上をして仕入税額控除を不正に計上すれば、本来は貰えない(返ってこない)お金が国から払われるので、税率が大きくなればそれだけ不正を行う側からしたらうまみがあるという事になるのだと思います。

詳細は分かりませんがただ単純に架空の経費計上だと、当然P/Lが不自然になり疑いの目も向けられやすくなることから、売上を免税にして表面上は適切な企業活動を行っているように見せて消費税の不正還付を行ったという事なのでしょうか。

会社での役割変更

以前から書いていますように人材営業、とは言っても今はガンガン新規開拓をしているわけではなく、既存の顧客から派遣や人材紹介のオーダーを頂いてそこから投入まで繋げたり、従来の派遣スタッフの管理をしたり、といった事を会計士・税理士業務と並行して行っており、どちらかといえば会計士・税理士業務の方に比重が移っていっていました。

それが今年から管理本部へ異動となったため、今は人材関係の顧客や派遣スタッフの引継ぎを進めているような状態です。これまで中途半端に人材営業も会計・税務もやっていましたが、今後は直接的な人材営業からは離れていく事になります。(とはいっても顧問先から人材のオーダー頂ける場合等には当然、積極的に窓口になります。)

そもそも会計士・税理士から派遣や人材紹介の営業をするというキャリアを築く人は多分そうそういないかと思いますが、そんな人生を歩んでいます。今となっては少なくとも顧問先で労働法関係の事や、人材市場の状況とか相場観とか聞かれたときは当然割と答えれたりするのでそれなりにプラスになっているんだろうと思います。

適格現物出資(DES)

金銭債権を有している債権者がその債権を債務者の株式に振替える事をデット・エクイティ・スワップ(DES)といいますが、親会社が業績悪化の子会社に対する貸付金等について、経営支援等の目的で現物出資を行って子会社株式に振替える事があります。 。

ここで、100%子会社に対しての貸付金を株式に振替えた場合には当該子会社株式を保有し続ける前提であれば、当該行為は適格現物出資となり、会計上も税務上も譲渡損益は生じない処理となります。 しかしながら、このDESを行う段階では恐らく貸付金について貸倒引当金が引当てられる等、親会社のBS上の債権額は何らかの評価額とされている場合も多いのではないでしょうか。

この場合、会計上は結合分離適用指針により、親会社が取得する子会社株式の取得価額は貸倒引当金控除後の価額となり、税務上は税務上の債権の帳簿価額が子会社株式の取得価額となりますので、会計と税務では子会社株式の取得価額が異なる事となる可能性があり、税務調整が必要となる可能性もあります。

また、消費税の処理においては、親会社では金銭債権の譲渡として、譲渡対価(簿価では無く時価)の5%が非課税売上となりますのでこの点、注意が必要です。

法人成り②

前回の法人成り①では、個人事業主の最終年度の事業所得の計算について記載しましたが、今回は法人成り後の消費税についてです。

通常は法人成り後の法人の資本金が1,000万円未満の場合には、基準課税期間が無いことから法人1期目と2期目については消費税の免税事業者となるケースが多いかと思いますが、そうならないケースもあります。

まず、法人1期目において、事業年度開始からの6カ月間(特定期間)に売上高も給与支払額のいずれも1,000万円を超えている場合には2期目から課税事業者が強制されます。

また、こちらの方はあまりないかも知れませんが、個人事業主がそのまま100%オーナー株主として法人成りした場合等は、個人事業主時代の基準期間相当期間の課税売上高が5億円を超えていれば、法人1期目から課税事業者が強制されます。

法人成り①

法人成りをしたクライアントについて、税務上の注意点を確認したところ、そういえばという論点がありましたので記載します。

まず、個人事業主を廃業して法人成りという流れでは、当然個人事業主を廃業するまでの事業所得を確定させ、確定申告時に申告する事が必要となります。最悪確定申告時までに出来れば良いかというと法人に引継ぐ資産負債も確定させないといけないため、早い段階での処理が必要となります。

その際の事業所得の計算においては、商品等を法人に引継ぐ場合にはその商品を売上として最終年度の事業所得計算に含める事になります。その際には著しく低い価額の対価(通常の販売価額の70%未満の対価)での譲渡に注意しなければなりません。

また、個人事業税については、翌年に賦課決定があってから事業廃止年分について更正の請求を行うのが原則ですが、見込みで事業廃止年度に入れ込む事も認められています。

非上場株式の株価算定

株価の話がクライアントで出たので今回は非上場株式の株価についてです。

例えば大会社の区分となる会社が、事業承継等の関係で財産評価基本通達に従い株価を算出する際、過去は儲かっていて含み益がある不動産も多く所有しているが、今は赤字が続いているような時は、どちらかというと「株価を安く算出したい=類似業種批准方式で行いたい。」という風に考えられるかと思います。

しかしながら、赤字が続いていて配当もしていない、という事になると批准要素が1や0になってしまい、類似業種批准価額のみでの算出というのは出来なくなってしまうため、頭を悩ます事になるかと思います。

そんな時は直前期に配当を行っておけば良いという話もあるかと思いますが、「特別配当,記念配当等の名称による配当金額で,将来,毎期継続することが予想できない」配当は含まれないという事や、例えば株式の贈与の直前の1期だけ配当を出すというのはかなり不自然なため、やはりリスクがあるかと思います。

ゴルフ会員権

ゴルフ会員権をあまり見かけることが無いのですが、稀に見かけると大体取得価額を結構割っているという印象です。

そんな折、ゴルフ会員権の処理(税務)に関して質問を受けました。

会計上の処理としては、

株式形態の場合は、時価がある場合は著しい下落で回復見込みがある場合を除いて減損、時価無しの場合は実質価額の著しい悪化により評価減

預託保証金形態の場合は、時価がある場合は著しい下落、 時価無しの場合は回収可能性に疑義がある場合は、預託保証金を上回る部分は直接評価損を計上し、預託保証金部分は貸倒引当金を設定

という処理になります。

税務上の処理としては、 株式形態のゴルフ会員権は、税務上、相場の有無にかかわらず、法人税基本通達9-1-9等に基づく処理となるため、評価減の余地がありますが、預託保証金形態の場合は、退会の届出の提出や破産手続開始の決定等により、預託金返還請求権の全部又は一部が顕在化した場合にしか貸倒損失、貸倒引当金の対象とすることは出来ません。