セール・アンド・リースバック取引

クライアントでセール・アンド・リースバック取引の事案が出たのですが、リース取引に関する会計基準については勉強したことがあり、処理として長期前受収益の認識をして取崩してみたいな記憶はあったのですが、そういえば実務上直面したことは無く、恥ずかしながら会計上はともかく税務上はどうなるのだろうと考えた事すら無かったので調べました。

税務上は当該取引が実質的に金銭の貸借であると認められるかどうかで判断が分かれるようです。因みに、金銭の貸借と認められる場合は、譲渡人が譲受人に代わり資産を購入することに一定の理由があり、かつ、譲渡人が購入価額で譲受人に譲渡する場合です。

そして上記判断基準から、金銭の貸借と認められない場合は通常の固定資産売却及びリース取引として扱い、金銭の貸借であると認められる場合はその資産の売買はなかったものとし、かつ、譲受人から譲渡人に対する金銭の貸付があったものとして、所得の金額を計算することとなるとの事です。

とすると、例えば金銭の貸借と認められる場合で所有権移転外ファイナンス・リースの場合等には、税務上は元々の固定資産の償却が継続となり、会計上はリース期間定額法でリース資産を償却という形になるため、償却費がずれることになります。なんかややこしいですね。

貸倒損失(後半)

後半では、本に載っていた事例の中から個人的嗜好で適当に要約抜粋しようと思います。

まずは、債務者が夜逃げして行方不明となった場合はどうなるのかという事例です。

法的手続きを経ていない以上、法的手続きが貸倒の原因とはならない事から、前半で御紹介した3つの要件

①債務免除(基本通達9-6-1-4)…債務超過状態が継続し、回収不能

②事実上の貸倒れ(基本通達9-6-2)…債務者の資産状況、支払能力等からみて全額回収不能

③売掛債権の特例(基本通達9-6-3(1))…債務者の資産状況、支払能力等の悪化により取引停止

のいずれかに該当するかどうかですが、解説によると①②は会社の財務状況等が立証出来なければ適用不可、③に関しては取引停止以後1年以上経過という要件も必要なため、当該事例では直前まで取引があったので適用不可となっています。

夜逃げして急に一切連絡が取れなくなった場合は1年経とうが債務者の状況が分からないため、何れにしても③も適用出来ないのではと思うのですが、そこは解釈が違うのでしょうか。

かなり厳しいなと思います。ただ税理士さんのブログを色々と拝見させて頂くと回収努力次第では、ケースバイケースですが認められる事もあるようです。

次はトラブル債権についての事例です。もっと厳しい内容となっています。

つまり、相手方の支払拒絶により債権回収が出来ない場合ですが、解説では取引停止事由がそれでは③の適用は出来ない(国税庁質疑応答事例)という事です。夜逃げでも厳しいのにまあこれは①~③どれも要件満たさないですね。

また、安易な債権放棄もやめた方が良さそうです。貸倒損失計上事由として①が認められなかった時に寄付金扱いとなる可能性があり、金銭債権が消滅してしまうことから貸倒引当金の計上も出来なくなるようです。まあ寄付金の損金算入限度額以内の債権であれば問題無いのでしょうが…。

貸倒損失(前半)

しょっぱなのブログにて、書かせて頂きましたように、ここ最近圧倒的にインプット量が不足しているので、随時勉強(といってもほぼ読書)をしたらその都度概要を備忘的に記録してアップしていこうと思っていますが、さていつまで続けられるでしょうか。

今回読んだ本は中央経済社の「貸倒損失・貸倒引当金」です。

会計や税務では典型論点中の典型論点ですが、特に税務では貸倒処理に関して中々簡単に行かない部分もあります。

貸倒については、法人税法基本通達9-6-1~3により、それぞれ「法律上の貸倒れ」、「事実上の貸倒れ」、「形式上の貸倒れ」があり、それぞれ貸倒れ処理が出来る要件があります。

ここで、貸倒れには法的手続きを原因とする貸倒れ以外の貸倒れについても認められるのですが、

①債務免除(基本通達9-6-1-4)…債務超過状態が継続し、回収不能

②事実上の貸倒れ(基本通達9-6-2)…債務者の資産状況、支払能力等からみて全額回収不能

③売掛債権の特例(基本通達9-6-3(1))…債務者の資産状況、支払能力等の悪化により取引停止

と、それぞれ相手方の状態を立証する必要があるので、トラブルにより代金回収が出来ない場合等には、当然貸倒れ処理をするハードルが上がります。

因みに金融商品会計基準では債権の回収可能性がほとんどない場合には貸倒れ処理になるので、会計監査を受けている企業は会計に合わせられれば良いのにと別表5に記載された貸倒損失を見ながら思ったりする次第です。

受取配当の益金不算入

クライアントにて受取配当の益金不算入の話が挙がったので、今更何ですが、改めて確認しました。

受取配当については、株式保有割合により、下記①~④の区分に応じて益金不算入の計算をすることとなります。

①完全子法人株式等(株式保有:100%)

…100%が益金不算入

②関連法人株式等(株式保有:1/3超100%未満)

…受取配当等-関連法人株式等に係る負債利子額が益金不算入

③その他の株式等(株式保有:5%超1/3以下)

…50%が益金不算入

④非支配目的株式等(株式保有:5%以下)

…20%が益金不算入

ここで、受取配当等に係る法人税の申告に当たり,「非支配目的株式等」に該当する受取配当等を誤って「その他の株式等」と区分し,益金不算入額を過大に計上しているケースが多く見受けられるとの記事が税務通信で記載されていました。

名称の紛らわしさからか④を誤って③で計算するケースが多いとの事ですが、申告ソフトでは①~④の記載箇所が順番に並んでおり、④の方が保有割合が低いと感覚的に認識出来そうなものなので、手書きで申告書を記載されているような会社に多いのかなと個人的に思ったりもします。

住宅ローン控除

税理士ならそれぐらい当然のように知っておけよという感じなのですが、クライアントに新築マイホームを購入された方がいらっしゃったので、改めて住宅ローン控除について確認してみました。

このクライアントは8%での取得なので関係ありませんが、何でも今回の消費税率の引き上げに伴った控除の拡充がされているようです。

従来8%の消費税率で購入した住居に関しては最大10年間×40万円の控除を受けることが出来ましたが、この度10%の消費税率で購入、特別特定取得となり、令和2年12月31日までに居住の用に供した場合は、最大10年間×40万円に加えて11年目~13年目も控除を受けることが出来るようです。(なお計算式は10年目までと異なります。)

そういえば、かなり以前になりますが、夫婦共働きのため、双方から住宅ローン控除適用を意図して共有名義にしたにも関わらず、債務について連帯債務ではなく、連帯保証としてしまったために妻の住宅ローン控除を適用出来なかった方がおられました。

私が関わる前の手続きでの事で、ハウスメーカーのミスなのか誰の責任なのかは分かりませんが、連帯債務も連帯保証も一般的に家族単位で見ればほぼ名称の違い位の影響になるかと思いますが、控除額の影響はかなりのものになりますので注意が必要ですね。

商標権

商標権についての経理処理について質問を頂きました。

今まで正直あまり気にした事も無かったのですが、恥ずかしながら即答出来なかったので備忘のために記載しておこうと思います。

固定資産として計上(取得価額は、購入対価に付随費用を加えた額)が必要かどうかというのが論点ですが、そもそもその商標権が購入等により外部から取得したものなのか、自己創設によるものなのかでまず取り扱いが分かれることとなります。

外部からの取得であれば、有形固定資産と同様、固定資産としての計上が必要か否かの基準での判断となり、自己創設の場合は取得に要する費用は恐らくほとんど試験研究に該当する事になるかと思いますので、この場合、一般的に資産計上せずに費用化(但し厳密には諸説有)となるようです。

また、登録のために要する費用は、法人税法基本通達7-3-3の2の通り、固定資産の取得価額に算入しない事が出来ます。

従いまして結論としては、ご質問頂いた前提として、自己創設であり、製造原価として計上予定との事でしたので、お聞きした限りで問題無しという回答となりました。