欠損金の繰越制度

2020年6月19日の欠損金の繰戻還付(https://kawai-tax.info/wp/wp-admin/post.php?post=293&action=edit)でコロナ特例で繰戻還付の対象企業の範囲が時限的に広がっている旨の記載をしましたが、そもそもの欠損金の繰越制度についての備忘です。

単年度で所得が赤字であった場合でも、翌期以降において所得が黒字であった期において、繰り越された欠損を控除して良いという制度ですが、繰越可能な期限については

  • 平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金⇒9年
  • 平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金⇒10年

となっており、中小法人等以外であれば所得金額の50%しか控除出来ないという制限がありますが、資本金1億円以下の中小法人等(100%子法人等を除く)であればそのような制限は無く控除可能です。

地方税 事業所

本社と異なる市町村に支店や営業所、事務所、店舗を設けた場合には、新たに設置届を都道府県税事務所や市役所等に提出しなければいけません。

上記の届出の提出が必要となる場合としては、①人的設備,②物的設備,③事業の継続性の三要件を満たす場合となります。①については正規従業員以外でもアルバイトやパートの方等が事業所にいれば該当し、②については自己所有か否かは関係無く、賃貸していても事業を行うのに必要な設備があれば該当します。③については2,3ヵ月程度の一時的な事業の用に供される現場事務所等は該当しません。

上記から、例えば多店舗展開での直営店舗の一部がFC店舗へ変更となった場合には、FC店舗の運営法人側での事業所となり、フランチャイザー側では基本的には事業所に該当しなくなると考えられます。

続・市街地価格指数

3月12日に書きました「市街地価格指数」(https://kawai-tax.info/wp/wp-admin/post.php?post=542&action=edit)において、取得した時期が遠い過去等の理由で取得価額が分かる資料が無い場合の不動産の取得費を市街地価格指数を用いて計算する手法ですが、その後自分で調べたりベテランの税理士先生に話を聞いたりしてある程度使い方等が分かりましたので不十分かも知れませんが備忘します。

  • 当然の事ながらあくまでまずは当該関連資料(当時の仲介料、借入金関係資料、納税者の手控え等)から実額の把握に努めるのが先
  • 購入当時の固定資産税評価額等他の情報と併せた使い方が基本的に必要であり、市街地価格指数を使って算出した数値をそのまま使うのは無理がある
  • 一般的に昭和時代の固定資産税評価額は実際の時価との乖離額が大きいので注意(時価より相当低い)
  • 他に何も取得についての根拠資料が無くても取得価額について納税者の記憶がある程度あればその補足資料として使える可能性はある
  • 実務的な対応として、推定値を若干保守的(低め)に考慮するのも1つの方策

といった感じでしょうか。

無償減資

コロナの影響により、無償減資を行う会社が増えているようです。無償減資を行う理由としては、マイナスの利益剰余金を補填するいわゆる欠損填補のための減資という点だけでは無く、この際だからという事で新聞に書かれているような税務上のメリットをとるという意味合いも強いのではと思います。減資により、資本金が1億円以下になると、国税(法人税)では15%軽減税率の適用(所得800万円以下)や交際費の800万円までの損金算入が認められる等のメリットがありますが、地方税でも下記のような影響があります。

まず、資本金が1億円超の場合に負担する事になる外形標準課税の適用が無くなります。資本金1億円以下の会社の事業税は(繰越欠損控除後の)課税所得が出ていなければ課税されることは無いのですが、資本金が1億円超の法人は課税所得が出ていなくても、付加価値割や資本割により赤字であっても事業税が発生する事になります。但し、課税所得が多額に発生するような法人では、逆に外形標準課税の対象であった方が有利となる場合もあります。

また、これは単純に資本金のみの金額ではなく、税務上の資本金等の金額と会社法上(会計上)の資本金+資本準備金のいずれか大きい方を基準として使用しますが、地方税の均等割(都道府県民税、市町村民税)も1千万円、1億円、10億円、50億円の各段階で以下か超かによって税額が分かれるので、これも無償減資による欠損填補を行う事により税務上のメリットを受けられることになります。拠点が少ない会社であれば均等割減額のメリットはそれほど影響は大きく無いかも知れませんが、多店舗展開している小売りや飲食店等の多くの市町村をまたがって展開している会社であれば影響は大きくなります。

市街地価格指数

不動産を売却した時に取得費が不明な場合は譲渡収入金額の5%が概算取得費として認められていますが、過去の裁決事例では他のやり方も認められています。

それは、建物は建築物単価を用いて算出しその後減価償却を加味、土地については一般財団法人日本不動産研究所が出版している「市街地価格指数・全国木造建築費指数」という本の統計値を用いて、取得費を当時と現在の価格指数割合を用いて売却価額から推定するという手法です。

平成12年の裁決事例になるようですが、実際に取得に要した金額では無く、あくまで時価相当額になるため、諸々の要因により認められなかった事例もあるようです。確定申告期限が今年も1ヶ月延びたことで、色々考える余裕が出来るのは良いことですが悩ましいところです。

雇用調整助成金の計上時期 改

2020年7月28日に記載しました「雇用調整助成金の計上時期」( https://kawai-tax.info/wp/wp-admin/post.php?post=327&action=edit 参照)で、雇用調整助成金の計上時期については原因となった休業の事実があった日の属する事業年度にて、確定していない場合でも助成金を見積って計上という事を記載しました。

しかしながら2月26日に更新された国税庁の「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ 」において、「法人が交付を受ける助成金等の収益計上時期の取扱い」が追加されており、コロナ禍の特例措置による雇用調整助成金に関しては交付決定日の属する事業年度に収益計上するという上記と異なる取り扱いとなる旨が公表されましたので、少し遅くなりましたが記載しました。

FAQによると、「経費を補填するために法令の規定等に基づき交付されるものであり、あらかじめその交付を受けるために必要な手続をしている場合には、その経費が発生した事業年度中に助成金等の交付決定がされていないとしても、その経費と助成金等の収益が対応するように、その助成金等の収益計上時期はその経費が発生した日の属する事業年度として取り扱う」となっています。

つまり、通常の雇調金ではあらかじめ「計画届」の提出の手続をとり,同助成金による補てんを前提に休業手当が支給されることから、休業手当(費用)と雇調金(収益)との時期的対応を図る必要があるが、特例措置により、「計画届」が不要となっているため、原則通り交付決定日の属する事業年度に収益計上することになるという事のようです。

不動産所得 事業的規模

不動産賃貸事業が事業的規模で行われている場合には、最大65万円の青色申告特別控除が受けられたり、未収家賃が貸し倒れた場合に貸倒損失として経費に算入出来たりと特典があります。

ここで、事業的規模については、所得税法基本通達26-9で原則的には社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより実質的に判定すべきであるとされていますが、形式的な基準も設けられており、下記の何れかを満たせば特に反証が無い限り事業として行われているものとするとされています。

(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおお  むね10以上であること。

(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

ここで、事業年度の途中で事業的規模に該当しなくなった場合についても、その年の12月31日まで引き続き事業を行っていることが特別控除65万円(もしくは55万円)の要件では無いため、その年については最大65万円の特別控除を受けることが出来ると考えられます。

外国税額控除の控除時期

日本では基本的に発生主義により法人税の課税所得の計算がされますが、国外源泉所得については、その発生した時期と外国での課税時期とがずれる事が往々にしてあります。

この場合に、外国税額控除の適用事業年度と、個々の国外源泉所得の発生事業年度との対応関係をとる必要があるか否かという話です。この点、現行の外国税額控除は、国外源泉所得と外国法人税を個別対応させるという事はせず、必ずしも対応関係のない国外所得金額をベースに控除限度額を計算し、外国法人税を控除する制度となっています。( 法人税法69条①、法人税法施行令142条①)

そして、その時期のずれに調整対応する事が出来るように3年間の控除限度超過額、控除余裕額の繰越が設定されているという事になります。(法人税法69条②③)

地方税の予定申告経過措置

法人税の申告書作成ソフトで前期データを基に予定申告データを作成したところ、思っていた金額(前事業年度の税額の約1/2)にならなかったので何かミスったかと焦りました。

理由は令和元年10月1日以後に開始する事業年度で、法人県民税・事業税における税率の改正、特別法人事業税の創設が行われたためのようです。当該改正等により、令和元年10月1日以後に開始する最初の事業年度の予定申告に限って従来の前事業年度税額の約1/2にならないという事なります。

具体的には下記の通りです。

  • 法人事業税…前事業年度の割ごとの法人事業税額 ÷ 前事業年度の月数 × 6.3
  • 特別法人事業税…前事業年度の法人事業税の各割の合計税額 ÷ 前事業年度の月数 × 2.3
  • 道府県民税の法人税割…前事業年度の法人税割の税額 × 1.9 ÷ 前事業年度の月数
  • 市町村民税の法人税割… 前事業年度の法人税割の税額 × 3.7 ÷ 前事業年度の月数

なお、法人税、地方法人税、住民税の均等割りは経過措置が無く、従来通りです。

中小企業向け所得拡大促進税制(改正法案)

この御時世なので恩恵に預かる事が出来る企業は減っているであろう所得拡大促進税制ですが、国会に提出された改正法案で所得拡大促進税制についても改正案が含まれています。

従来は継続雇用者という概念を用いて要件の判定を行う必要があったため、要件の判定のステップとして継続雇用者(ざっくり言うと雇用保険の対象者で前期と当期にずっと給与を貰っている人)を抜き出す必要があったのですが、それが無くなり、改正前の税額控除限度額を算定の際に使用している雇用者給与等支給額が1.5%増加しているかどうかで判定する事になるようです。

また、要件判定でも税額控除限度額の算定でも雇用者給与等支給額を使う事になりますが、雇調金等の雇用関係の助成金について受給している場合においては、要件判定の際は控除しないが、税額控除額の計算においては当期及び比較期(前期)共に控除する必要があるようです。