6ヶ月定期代支給への変更

現在公共交通機関使用の通勤費を月毎に支払っている場合、これを6ヶ月の定期代前払にすればコストを下げる事が出来る可能性が高いです。では変更した場合に所得税(源泉税)、社会保険料、労働保険料の扱いはどうなるでしょうか。

所得税及び社会保険料については、1ヶ月当たりにならして考えるため、例えば6ヶ月分を支給した時に非課税交通費の15万円を超えても、1/6した額が超えなければ課税対象とはなりません。また、社会保険料の標準報酬月額においても1/6の額が通勤費として報酬に反映されるため、1ヶ月当たりの通勤費がよっぽど下がって等級が2等級以上下がるような場合以外は、従前の扱いと特段変わるような事は無いかと思います。

労働保険料については、4月~3月分の賃金総額が料率を乗じる対象になるので対応する月分の通勤費が賃金となりますが、給与からの控除に関しては職安に確認しましたが、支給時に一時に控除しても、各月ならして控除してもどちらでも問題無いようです。

労働者側から見ると前払で通勤費をまとめて貰える一方、金額としては減少するため、説明が適切になされないと反発が起きる可能性があるので注意が必要です。(そもそも交通費を補填支給しているだけなのですが…)

健康保険料の負担

健康保険料の負担は健康保険法161条により被保険者と事業主で2分の1ずつの負担となっています。健康保険組合の場合は事業主の負担割合を増加させることが規約で定める事により可能ですが、協会健保の場合は負担割合を変更は出来ません。

ここで、会社によっては健康保険料を事業主のみが負担している会社があるかと思いますが、これは許されるのでしょうか。

この点、こういった場合においては、会社が負担した健康保険料についても健康保険における賃金(税務上も)となるので、会社が負担したという事では無く、健康保険料込みの給料が給料総額となり、その中から健康保険料を支払ったという形になっているという事で、消費税の税抜なのか税込という感覚に近いような気がします。

フリーランス等への交通費等の支払い

士業やフリーランスとして働く人の交通費をクライアントがそれらの人に支払う場合においては、報酬として源泉徴収の必要があります。一方で、クライアントから交通機関や宿泊施設へ直接払った場合には源泉徴収は不要となります。(所得税基本通達204-4)

税務通信3615号にこの点についての記事がありましたが、国税庁への取材により立替払いの場合は源泉徴収不要との事で確認がとれたとの事です。つまり、記事によれば領収書をクライアント名義でとり、当該クライアント名義の領収書を提出する事により精算処理を行う事で立替払いとなり、その場合は源泉徴収不要という事のようです。

領収書を自分(個人)名義かクライアント名義でとるかの違いですが、公共の交通機関でも新幹線等の長距離のものならまだしもローカル線なんかでもいちいち必要になるんでしょうか。ローカル線の運賃はそもそもクライアントへの請求の際に金額や乗降駅位の記載だけでしているケースも多いと思うのですが、この場合は立替と認められるんでしょうかね。

雇用調整助成金の計上時期

雇用調整助成金は税務上の計上時期は申請時なのか通知があった時なのか、 いつ計上すべきかについてです。

ここで、法人税の基本通達の2-1-42に「賃金、職業訓練費等の経費を補填するために雇用保険法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定等に基づき交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する事業年度終了の日においてその交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積り、当該事業年度の益金の額に算入するものとする。」と記載があります。

雇用調整助成金についてみると、休業手当は賃金に、雇用調整助成金は雇用保険2事業の雇用安定事業として行われる助成金であるため、上記の給付金等にあたります。とすると、申請をした時でも入金があった時でも通知が来た時でもなく、原因となった休業の事実があった日の属する事業年度となります。

補足ですが、障碍者の法定雇用率を上回った結果受け取る事が出来る障碍者雇用調整金は上記の給付金等に当たらず、支給の決定を受けた時になります。これは、雇用調整助成金は費用の補填なので費用と収益を対応させるという意味合い、障碍者雇用調整金は費用の補填という性質では無いためという理由のようです。

なお、2021年3月9日の「雇用調整助成金の計上時期 改」にて上記更新しています。

欠損金の繰戻還付

自粛解除となったとはいえ、未だコロナの影響がいつまで続くか分からない中、予算や見通しが固まらず嘆いておられる会社や、コロナさえ無ければ黒字決算となったのにという会社も多いかと思います。

そんな中、コロナの影響でくしくも赤字となった(欠損金が生じた)会社が使える制度として、繰戻還付という制度があります。これは、簡単に言うと当期に発生した欠損金をベースとして前期申告に係る法人税を還付出来るという制度です。

従来であれば資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下等の要件を満たす中小企業者等であれば制度適用が認められましたが、今は時限的にコロナの影響で対象範囲がもっと規模の大きい会社まで及びます。

少しでもキャッシュインが欲しい会社には使える制度なのでは無いでしょうか。但し、事業税等の地方税では適用出来ないので、繰戻還付を行うと国税と地方税の繰越欠損金にずれが生じるので注意が必要です。

消費税の脱税

税務通信3609号の記事にまた消費税の脱税事例が載っています。告発事例として、どうやら3課税期間の消費税4,700万円が無申告だったようです。告発されたのは人材派遣会社のようですが、3期間で4,700万円ということは1期平均1,500~1,600万円でこれを8%で割り返すと約2億円になります。これは課税売上割合を仮に無視すると、課税売上から課税仕入を控除した額が約2億円という事になりますが、人材派遣業なので労働分配率が高く、課税仕入がそれ程ないとしてもそこそこの規模になります。

法人税も同様に無申告だったのかどうかは記載が見当たりませんが、ネットのニュース媒体にもあった記事によると平成21年の設立以来無申告だったとの事です。これくらいの規模の会社で知らなかったという事は無いでしょうから故意に無申告だった可能性が高いと思いますが、同業なのでこういう理由なのでは、と勝手に考えるところでは、人材派遣業の場合、上記の通り労働分配率が高いため、赤字でも消費税の支払が発生することは往々にしてあると思います。ざっくり言えば本来売上で受け取った消費税と経費等で支払った消費税の差額を納める制度になるのですが、いわば預かったお金を後で払う形になるため、赤字で資金繰りも困っているのに消費税は払わないといけないというのが地味にきつかったりするという事は大いにあると思います。

法人税の申告は行っていたのであればもっと早くに指摘を受けていたと考えられますので法人税も申告していなかったのでしょうか。そうだとすると法人税については触れられていなかったので利益(所得)は出ていなかったんでしょうかね。

役員報酬の未払計上

例えば、給与の計算期間が末締めの翌月払いであるような場合には、従業員給与は月末時点で確定債務となり、未払計上されるのが通常だと思いますが、役員報酬も給与と同様に当初より末締めの翌月払いという実務を行っていた場合に未払計上は認められるのかという疑問があります。

ここで、株式会社の役員は会社との関係でいえば委任契約であり、雇用契約ではありません。契約関係が異なる事により、当該未払処理が異なってくるのか否かですが、見解は分かれているようです。ネット等で色々調べてみると、未払計上出来ない派は、たいていの理由は委任契約だから末締め等の概念が無いためとの事のようで、未払計上問題無い派は、委任契約であれ、末時点で債務が確定しているので当然未払計上可能だという事のようです。念のため、国税局の電話相談センターにも問合せをしてみましたが、2回電話させて頂いて1回目がまあ問題無いだろうという事で、2回目が委任契約なので本来は末締めという概念は出ないが、実務上未払計上で従来より処理している場合に、税務調査等においてそこをどうこうという事はまずないと思うので大丈夫だろうという事を丁寧に説明頂きました。

そもそも民法によれば、「受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。」(民法648条2項)となっていますが、会社との間で末日を区切りとしているならば私は末日を持って債務が確定するという考えで良いのでは無いかと思います。実際役員報酬の未払計上のケースはあまり見ないですが、税理士との顧問契約は、こちらも委任契約になりますが、こちらは末締めで未払計上するケースを割と見る事があります。

債務確定主義

例えば給与が毎月15日締めであるような場合には、決算処理において16日~月末分のいわゆる帳端給与を未払費用として費用計上します。税務上これは債務確定主義に基づき計上されていることになります。

債務確定主義とは、償却費以外の費用で事業年度終了の日までに債務が確定しているものについて当該事業年度に損金算入が認められるという事で、①当該事業年度終了の日までに債務が成立しており、②その債務について当該事業年度終了の日までに具体的給付をすべき原因が発生しており、③当該事業年度終了の日までに金額を合理的に算定できることという3要件(基本通達2-2-12)に該当する必要があります。上記の未払給与でいえば、月末まで勤務実績があるので締日が到来せずとも債務が確定しており、なおかつ勤務実績という給付原因も発生しており、日割り等で合理的に算定できるため損金算入という事です。

一方で企業会計上は保守主義の原則という原則等があるため、債務確定を待たずに見積りで費用計上する事が必要になるケースがあります。例えば賞与引当金ですが、一般的に賞与は支給日までに辞めてしまうと支給しないでしょうし、業績が悪化した場合等は積立額を急に減らすケースも当然あります。ですので債務として確定していないので税務上は金額が実際に確定するまでは費用として計上出来ません。但し会計上は上記の保守主義の原則や適切な期間損益計算が求められる事から、債務として確定せずとも既に発生した労働の対価部分として見込みで引当計上する必要があるのです。

結果的に賞与引当金については税務の所得計算と会計の利益計算で差異が生ずる事になり、調整が必要になる事になります。

無対価の適格合併

前回は適格合併の~について触れましたが、今回は無対価合併が適格になる場合についてです。無対価合併とは文字通り対価の支払いを伴わない合併です。ポイントとなるのは株主の価値が移転しているかどうかにあるかだと思います。

例えばA社とB社という2社の株式を100%ずつ持っているXという人がいたとして、この2社を合併させるような場合には何等かの株主価値の移転は発生しておらず、2社が1社になるという変化はあれどもXさん1人の株主の支配の中で合併は起こっており、何らの価値の移転も発生していません。

つまり、このような場合は価値が移転していない以上、資産や負債の譲渡という事も起こっていないので適格になるという理解を私はしています。また、同様に上記のように1人が2社持っている場合だけでなく、Xとその親族複数人が持っているような場合でもA社とB社の株主構成および各株主の持株割合が同⼀であれば、無対価合併によりそれぞれの株主間で価値の移転が生じていないため、この場合にも支配継続要件は必要ですが適格合併になるという事になります。(法令4条の3第2項2
号)

適格合併における支配関係

法人の合併とは2個以上の法人が法定の手続きにより1つの会社になる事ですが、税務上では適格か非適格かで処理が異なってきます。基本的な考え方としては、移転する資産等に対しての支配が継続していれば適格とされ、継続していなければ実質的に譲渡と同様にとらえ非適格となります。

従って、適格の場合は合併消滅法人から引き継ぐ資産等は消滅法人の最終事業年度終了時の簿価により引き継ぐ事になり、非適格の場合は時価により引き継ぐ事になります。

そして、適格合併には企業グループ内の合併と共同事業を行うための合併がありますが、今回は企業グループ内の合併で、⼀の者との間に当事者間の⽀配の関係がある法⼈相互の関係がある場合における一の者についてです。

上記の関係は、例えばある株主が2社の株式を100%持っていた場合等に、当該2社を合併させるようなケースです。ここで、その株主が個人の場合で1人で100%持っていれば分かりやすいですが、親族で分散して持っていた場合はどうでしょうか。

これについては、株主の親族(6親等内血族、配偶者、3親等内姻族)が持っていればそれぞれ一の者に該当し、支配関係が認められるようです。

因みに上記の適格とするにあたっては、原則として合併時に被合併法人の株主に合併法人の株式のみが交付され、合併後の支配関係が継続する事も必要となります。