外国税額控除の控除時期

日本では基本的に発生主義により法人税の課税所得の計算がされますが、国外源泉所得については、その発生した時期と外国での課税時期とがずれる事が往々にしてあります。

この場合に、外国税額控除の適用事業年度と、個々の国外源泉所得の発生事業年度との対応関係をとる必要があるか否かという話です。この点、現行の外国税額控除は、国外源泉所得と外国法人税を個別対応させるという事はせず、必ずしも対応関係のない国外所得金額をベースに控除限度額を計算し、外国法人税を控除する制度となっています。( 法人税法69条①、法人税法施行令142条①)

そして、その時期のずれに調整対応する事が出来るように3年間の控除限度超過額、控除余裕額の繰越が設定されているという事になります。(法人税法69条②③)

地方税の予定申告経過措置

法人税の申告書作成ソフトで前期データを基に予定申告データを作成したところ、思っていた金額(前事業年度の税額の約1/2)にならなかったので何かミスったかと焦りました。

理由は令和元年10月1日以後に開始する事業年度で、法人県民税・事業税における税率の改正、特別法人事業税の創設が行われたためのようです。当該改正等により、令和元年10月1日以後に開始する最初の事業年度の予定申告に限って従来の前事業年度税額の約1/2にならないという事なります。

具体的には下記の通りです。

  • 法人事業税…前事業年度の割ごとの法人事業税額 ÷ 前事業年度の月数 × 6.3
  • 特別法人事業税…前事業年度の法人事業税の各割の合計税額 ÷ 前事業年度の月数 × 2.3
  • 道府県民税の法人税割…前事業年度の法人税割の税額 × 1.9 ÷ 前事業年度の月数
  • 市町村民税の法人税割… 前事業年度の法人税割の税額 × 3.7 ÷ 前事業年度の月数

なお、法人税、地方法人税、住民税の均等割りは経過措置が無く、従来通りです。

中小企業向け所得拡大促進税制(改正法案)

この御時世なので恩恵に預かる事が出来る企業は減っているであろう所得拡大促進税制ですが、国会に提出された改正法案で所得拡大促進税制についても改正案が含まれています。

従来は継続雇用者という概念を用いて要件の判定を行う必要があったため、要件の判定のステップとして継続雇用者(ざっくり言うと雇用保険の対象者で前期と当期にずっと給与を貰っている人)を抜き出す必要があったのですが、それが無くなり、改正前の税額控除限度額を算定の際に使用している雇用者給与等支給額が1.5%増加しているかどうかで判定する事になるようです。

また、要件判定でも税額控除限度額の算定でも雇用者給与等支給額を使う事になりますが、雇調金等の雇用関係の助成金について受給している場合においては、要件判定の際は控除しないが、税額控除額の計算においては当期及び比較期(前期)共に控除する必要があるようです。

派遣料と外形標準課税

事業年度終了日に資本金が1億円を超えるような大きい規模の株式会社は法人の所得を基準とする事業税のみでは無く、資本金等や付加価値などを課税ベースとする外形標準課税が事業税の一部として課されます。

そして、この外形標準を構成する付加価値の中には報酬給与額が含まれ、この報酬給与額には自社の直接雇用の社員へ支払う給与のみでは無く、派遣元会社に支払う派遣料の75%も含まれます。

この75%というのは派遣料にはマージン等が乗っており、派遣料の全てが派遣スタッフへの給料では無いからなのですが、実際には派遣料の75%が派遣スタッフの給料になっていることはあまり無いのではと感じます。(実際には60%~70%の間位じゃないでしょうか。)それは派遣会社は派遣料の中から、派遣スタッフへの給与のみでは無く、社会保険料、間接費等の経費も捻出しているからです。当然マージン分も入ってますので、25%の中から給与以外をというと正直かなりきついかなと、そう思う訳です。

減価償却不足額

固定資産の減価償却をする場合に、会計上の償却費と税務上の償却費と異なる場合があります。例えばそれは、会計上の償却費はその固定資産の実態に見合った耐用年数を設定して行い、税務上の償却費は法定の耐用年数を使用しないといけないために耐用年数が異なる事により生じる事になります。

ここで、多いケースとしては会計上の償却費>税務上の償却費という形かと思うのですが、この場合は償却超過額となり、翌期以降に超過額が繰り越されたうえで、税務上の償却費>会計上の償却費となった期において、その差額か超過額かどちらか小さい額が税務上の損金となる事になります。

逆に会計上の償却を行わなかった場合のように、税務上の償却費が大きくなった場合は償却不足額が発生する事になります。その場合には上記のように償却超過額がある場合にはその範囲で損金算入となりますが、超過額が無い場合や超過額を超える不足額となった場合には、超過額発生時の場合のように翌期以降で超過額が発生したとしてもそれに充てて損金算入する事はできません。しかしながら、永遠に損金に出来ない訳ではなく、除却した場合や耐用年数経過後には損金算入する事が出来るようになります。

使用人兼務役員の賞与の支給時期

役員に賞与を支払う場合に損金として認められるためには事前確定の届出が必要となり、その届出に基づいた支給が必要となりますが、使用人としての地位も兼ねる使用人兼務役員に対して支払う使用人としての賞与についての注意点です。

それは、支給時期についてです。法人税法施行令第70条第3号で使用人兼務役員の使用人としての部分に対する賞与で、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものの額は損金不算入となる旨の記載があり、法人税法基本通達の9-2-26で、使用人兼務役員の賞与を他の使用人の賞与支給時期に未払金として経理処理したうえで他の役員への給与の支給時期に支払ったような場合が「他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したもの」の意義として記載されています。

つまり、資金繰りの都合等から一旦未払金として計上しておいて、後で資金繰りの余裕が出た時に払ったとしても、使用人兼務役員への賞与は損金として認められないという事になり、税務上デメリットとなるというリスクがあるので注意が必要です。

ひとり親控除

令和2年分の確定申告から新たな所得控除としてひとり親控除(所得控除額35万円)が設けられています。これにより従来の寡婦控除の「特別の寡婦」と寡夫控除がひとり親控除という扱いとなります。そして、ひとり親控除の要件を満たす場合は、寡婦控除では無くひとり親控除を受ける事となります。下表は財務省ウェブサイトからの出典です。

ひとり親控除の要件となる人は、原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていないこと又は配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の三つの要件の全てに当てはまる人です。

  1. その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと。
  2. 生計を一にする子がいること。
    この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。
  3. 合計所得金額が500万円以下であること。

寡婦控除と違ってひとり親控除は元々の婚姻関係があった事は要しないので、恩恵を受けられる人も増えるかと思います。

テナント立ち退き時の内部造作

借りている建物にテナントが内部造作を施工した場合、一般的には立ち退き時にテナント側で原状回復を要する契約となっている事が多いかと思います。一方で後継テナントとの関係上、貸主の都合で原状回復をせずとも退去出来るケースも中には出て来る可能性もある訳ですが、その時の内部造作についての課税関係についてはどうなるのでしょうか。

まず、借主側では貸主への贈与、寄付金扱いになるのではという点がありますが、この点、税務通信3434号でも触れられていますが、借主側からすると撤去費用を負担せずにすむという経済合理性があるため寄付金認定とされる可能性は低いだろうとされており、他の書籍等でも廃棄損として損金算入可能だとされています。

一方で貸主側では内部造作について受贈益となるのかという点があります。これについては、契約上は原状回復義務が借主側にあるにも関わらずそれを免除した形にしたうえで内部造作を引き継ぐ、という事は貸主にとってそれは価値ある資産を譲り受けた形となるのでやはり受贈益になるのではないかと考えます。

2020年振り返り

年内最後に2020年の主な事項の振り返り

  1. ほぼ全てのミーティングや社内懇親会がオンライン化され、拠点間の行き来が減った。
  2. 会計や税務の関与先が増加、システム関係のコンサル業務も開始
  3. 年始から組織図を改変し、間接系部門として管理本部を独立した部として設置した。結果、各セクションの指示系統が不明瞭だったことが明瞭化し、伝達等がスムーズに
  4. JB(ジュニアボード)での協議により、全社集会のオンライン化や会社の新HPのコンテンツ内容の決定等、全社的な取組がいくつも決まった。
  5. 会社の1つの部門が不採算のために廃止となった。
  6. 雇用調整助成金や学校休校助成金等、いくつかの助成金の申請業務を行った。
  7. 社会保険労務士試験に合格した。(2021年登録完了予定)
  8. 基本的には週2アップの当ブログを続けることが出来た。
  9. コロナの影響で太った。
  10. コロナの影響で担当している派遣スタッフの引継ぎが行えず、管理本部に所属しながら、担当の派遣スタッフを持ち、会計や税務のコンサルも直接行うという体制が続いた。
  11. 初めて社内向けの研修講師を行った。来年も行う予定

他にもいろいろあったかと思いますが、ぱっと思いついたのは上記でした。

土地や建物の売却

個人が土地や建物不動産を売却すると、売却金額が取得費及び譲渡費用よりも高ければ譲渡所得が発生し所得税がかかります。譲渡した年の1月1日時点で5年超保有しているものであれば所得税率が15%(住民税率5%)の長期譲渡所得に、5年以下であれば所得税率30%(住民税率9%)の短期譲渡所得となります。なお、当該土地及び建物が相続により取得した場合には被相続人が取得した時を基準として保有期間を算定する事になります。

ここで、土地及び建物を売却した場合に、取得した時の内訳が分からないような場合には、「建物と土地の取得」の時にも書きました方法により区分することになります。ただし、古すぎて固定資産税評価額の資料等が無く合理的な区分方法が他に無い場合には、建物の標準的な建築価額表に基づいて算出した額を取得価額とし、減価償却計算を行ったうえで建物の取得費として差支えないとされています。