個人事業税(請負)

個人事業税は、地方税法第72条の2で定められた事業を営んでいる個人が納める税金で原則として納付期限は8月と11月期限の年2回となります。第一種事業から第三種事業に分類され、税率は柔道整復師等の3%、畜産業の4%、最も多い業種に適用される5%となります。

ここで、例えば建設業や内装工事関係等で請負の契約形態をとっていても、実質的には雇用に近いような形で仕事をされている方もおられるかと思います。個人事業税は所得税の確定申告や決算書の内容をベースに賦課課税方式がとられますが、確定申告や決算書の内容だけでは請負業に該当するかどうかの判断ができず、その確認のための照会文書が府税事務所から送られてくることがあります。

確認される内容としては概ね独立性や危険負担等の観点からとなり、どの都道府県もそこまで変わらないとは思いますが、例えば大阪であれば、時給や日当制で単価が決められているか、発注元から拘束時間が決められているか、下請けを自分の判断で使っても良いか、他の発注元の仕事を受けても良いか等の項目になります。

これらの回答を受けて府税事務所のほうで総合的に考えて該当するかが判断されるようですが、問い合わせて聞いてみたところ、結果的に請負業に該当しない(個人事業税が課税されない)となった場合でも、そのことをもって発注元に何か影響を及ぼすような事を府税事務所はしませんとのことでした。

特定譲渡制限付株式の税務

以前に触れた譲渡制限付株式で、当該譲渡制限付株式が当該役務の提供の対価として当該個人に生ずる債権の給付と引換えに当該個人に交付されるものであるもの等の場合は特定譲渡制限付株式(法人税法第54条1項)となります。

特定譲渡制限付株式を交付した場合の損金算入時期は、役員や従業員に給与所得等としての課税が確定した時期となり、その課税確定時期は譲渡制限が解除された日です。( 所得税基本通達 23~35 共-5 の 3 )

そして、損金に算入するためには事前確定届出給与となるので、原則として納税地の所轄税務署長に「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めの内容に関する届出」をしていることが必要とされています。

ここで、職務の執行の開始の日(原則、定時株主総会の日)から 1 月を経過する日までに株主総会等(株主総会の委任を受けた取締役会を含むものと解されます。)の決議により取締役個人別の確定額報酬又は確定数の株式についての定め(その決議の日からさらに 1 月を経過する日までに、その職務につきその役員に生ずる債権の額に相当する特定譲渡制限付株式又は確定数の株式を交付する旨の定めに限ります。)がされ、その定めに従って交付されるという要件を満たす場合については、上記届出は不要とされています。(法人税法第34条1項2号、法人税法施行令第69条3項1号)

中間申告

法人税法第71条で一定の法人以外は中間申告をしなければならない旨が定められています。中間申告の際には①(前期が12ヶ月間あるとして)前期の6/12の予定申告か、②半期で仮決算を行ったうえでの申告に基本的にはなります。

①の予定申告については以前にも書いた「経過措置」により6/12にならない事もありますが、そうでなければ前期の年税額の半分となります。また、②については、例えば前期は儲かったものの、当期の業績が芳しくなく、前期の年税額の半分を納める資金的な余裕もあまりないような場合に、中間納付額を出来るだけ少なくするというような目的で仮決算を組んで半期ベースで申告を行うものになります。

ここで、法人税法第73条で中間申告を行わなかった場合には、上記の①で中間申告書の提出があったものとみなすとされています。つまり、中間申告を忘れていたような場合でも、出したものとみなされるので無申告にはならないよという事になります。但し、納付をしなければ延滞税は当然発生しますのでその点は注意が必要です。

特別償却(中小企業投資促進税制)

青色申告書を提出する中小企業者等(資本金3,000万円超も含む)が特定機械装置等を取得し、製造業や建設業等の一定の事業の用に供した時は普通償却に加えて特別償却を受ける事が出来ます。

ここで特定機械装置等とは1台当たり160万円以上の機械及び装置や1式70万円以上のソフトウェア等がそれにあたり、特別償却として基準取得価額×30%が損金算入出来ます。(資本金3,000万円以下の中小企業者等は税額控除との選択可)

一方で会計上の処理としては、特別償却を利益に影響させるかどうかという点があります。つまり、特別償却に関しては税制上の措置であり、適切な期間損益の観点からは利益に影響させるべきでは無いと言えます。

そこで、剰余金処分方式により、「繰越利益剰余金××/特別償却準備金(純資産)××」という処理を行い、その後時の経過により、取崩しを行っていくという方法が損益計算の観点からは望ましいと考えられます。

とはいえ処理が煩雑となるため、多くの中小企業は特別償却を利益に影響させる方法をとっているのではと思います。ここで、特別償却を会計上の損益に影響させる場合には原価計算基準により非原価項目として扱われますのでその点注意が必要です。

組別総合原価計算

久しぶりに総合原価計算に触れることになりました。そもそも総合原価計算は大量生産品目に対して一定期間に要した原価の総額をその期間の生産量で割ることにより単位当たりの平均製造原価を算出し、例えば期末時点の仕掛品や製品の在庫金額を計算したりするために行う計算になります。

この総合原価計算にも、単純総合原価計算、工程別総合原価計算、組別総合原価計算、等級別総合原価計算等の種類があるのですが、このうち今回業務で触れたのは組別総合原価計算になります。

組別総合原価計算は、工場内で製品を複数種類製造しているような場合に、例えばA製品、B製品とそれぞれの製品群に要した原価を集計し、その期間の生産量を持ってそれぞれの製品群の製造単価を計算します。ここで、集計にあたっては直接的に各製品に紐づきやすい材料費等の直接費と、各製品に直接的には結びつけるのが困難な給与等の間接費があり、この要した間接費を何らかの基準によりそれぞれの製品群に配分する必要があります。この基準はその会社の考え方により、簡易にも詳細にも出来るのでどこまでやるかというバランスをとるのがポイントになると考えます。

非課税の出張手当

出張手当として出張をした従業員へ交通費等のほかに日当として支給をしている会社も多いと思いますが、これは出張に行く事で通常は要しない支出が発生する事に対しての補填という意味合いのものとなり、その範囲を逸脱すれば給与所得とみなされるリスクがあります。

ここで、所得税基本通達9-3において、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては

  • その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
  • その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

という基準が示されてはいますが、明確な基準とはいえません。当該支給額については所得税がかからないことから、節税対策の基本ともなっていますがあまりにも高額な日当だと、上記の通り給与所得とみなされる可能性もあるので注意が必要です。

また、同一労働同一賃金の観点からは、例えば職務内容が同じにも関わらず、雇用形態によってその支給額に違いがあるような場合には、その差額には当然合理的な理由が必要となります。

コミュニケーションツール

数年前までは主に電話、Eメール、携帯のSMS位が遠隔でのコミュニケーションで使用するツールだったように思いますが、今は様々な手段が出てきて離れていても多様なコミュニケーションが可能となっています。

私に関しても、電話やEメール等は従来通り使いますが、社内はチャットワーク、Zoomといった新たなツールを最近良く使うようになっており、クライアントとも数年前からLINEを使うようになり、最近では社内同様ZoomやSlackといったようなツールでのやり取りが増えてきています。

大変便利になった反面、どうコミュニケーションをとれば良いかの選択肢が増えていることもあり、どの場面でどういったアクションをとるかに悩む事も増えました。今も直接対面で話すのが好ましいと感じる方も当然おられますし、TPOに応じた対応がより必要になって来ているのだと感じています。

有価証券報告書の提出

有価証券報告書の3月決算の会社の他社事例を検索していると、6月前半にも関わらず提出されている会社がありました。その会社には2種類あり、既に提出前に株主総会が終わっている会社、そして株主総会の前に有価証券報告書を提出した会社です。

ここで、3月決算の会社は通常は遅くとも3カ月以内の6月中には株主総会を行う必要があるため、6月に行う会社が多いですが手続きに問題が無ければ5月に行う事は何ら問題はありません。一方、後者の株主総会前に有価証券報告書を提出するというのは昔はダメでしたが、今は法的にも問題ありません。

しかしながら、そもそも決算を締めて決算短信、事業報告や計算書類等の作成を短期間で行い、当然監査も受けるというタイトな決算のプロセスの中で、有価証券報告書も作成するというのは時間的にもかなり厳しいはずです。また、株主総会前に有価証券報告書を提出するには役員の一覧等、議案承認が前提としての記載等を一部含むことになり、万が一否決された時などはその後臨時報告書等の手続きが面倒という事もあるかと思います。

とはいえ、株主総会前に決算短信や計算書類等よりも情報量の多い有価証券報告書を閲覧出来ることは株主への情報提供という観点でより資するものであるというのは当然あると思います。

会計上の貸倒引当金

税務上の個別評価の貸倒引当金は「個別評価の貸倒引当金」で記載した通りですが、会計上の貸倒引当金は税務上の貸倒引当金とはその金額や判断等において異なってきます。会計上は貸倒懸念債権や破産更生債権等に該当する場合には個別に貸倒引当金の設定が必要となりますが、その判断は法的に手続きが進んでいる場合はもとより基本的に実質ベースとなります。

例えば破産手続開始日が事業年度末を超えた場合には、その事業年度の決算手続き中であっても、その事業年度での個別評価の貸倒引当金の税務上の形式基準は満たしません。一方で、会計上は事業年度末を超えていたとしても手続きを行う事が判明した時点で、通常はその実質的な状況は事業年度内に既に生じていたと考えられるため、その事業年度内で破産更生債権等として貸倒引当金を計上するのが原則としての処理になる事が多いかと思います。

とはいえ上場企業やその関連会社等でも無ければ会計上と税務上でタイミングや金額を合わせるケースが多いかも知れませんが、決算や来期予算の都合上で当期に損失を早く取込みたい等の事情であれば税務上の調整は必要になりますが、会計上の貸倒引当金の設定を検討しても良いかも知れません。また、その際は中小企業の会計に関する指針に基づき、臨時かつ巨額であれば特別損失に計上する事も忘れず検討するべきかと思います。

計算書類の承認

株式会社の機関設計は会社法になってから、取締役会や監査役を設けないといった商法時代よりも柔軟な設計ができるようになっていますが、その機関構成によって決算承認プロセスも異なるものになってきます。

商法時代の株式会社の必要機関をベースとすると、まず計算書類について監査役の監査を受けることになります。そして、監査で特に問題が無ければその後取締役会の承認を経て株主総会へ提出され、株主総会の承認を経るというプロセスになります。(会社法第436条1項、2項、438条1項3号、2項)

上記の会社が会計監査人設置会社で計算書類が無限定適正意見等の要件を満たせば株主総会の承認は不要となり、株主総会へは報告で足りることになります。(会社法第436条2項、439条)

ここで、取締役会設置会社では無く、監査役を置かない会社の場合は監査役監査は行われず、取締役から株主総会へ提出された計算書類は株主総会での承認を経ることになります。(会社法第438条1項4号、2項)