コロナ関連での当面の税務上の取扱いに関するFAQ

国税庁から「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」が3月に公表され、そこから何度か更新され、4月30日に直近の更新がされています。

直近4月30日の更新では、4月30日施行の新型コロナ税特法絡みの説明も多いようですが、賃貸物件オーナーの賃料減額が一定の条件を満たせば寄付金とならない事、欠損金の繰戻還付の対象法人の範囲を拡大する事、特別貸付に係る契約書の印紙税の非課税措置に関しての説明等が記載されています。

その他、助成金を受けた時の課税非課税についての具体例が記載されています。特別定額給付金は新型コロナ税特法を根拠として非課税に、小学校休業等対応助成金や雇調金、持続化給付金は事業所得等に区分されるとの事です。

給与か外注費か

税務通信3603号の国税当局の未公表事例集で外注費に仮装して源泉税の課税逃れの事例が出ていました。なんでも人手不足対策でパート従業員を確保するため、給与として支払っていたものを外注費としての支払いに一部変えていたとの事です。

あるある論点といっても良いものですが、つまり経営者側として、給与ではなく外注費とすることにより、①消費税の課税仕入となる ②健康保険等の社会保険料の事業主負担部分が無くなる ③上記の源泉税の事務処理が無くなる等のメリットがあります。一方で働く側としても、源泉税等の控除額が無くなり、手取りが増える等のメリットがあり、実態は給与所得のものを外注費として仮装するケースが脱税手段としてはままあります。

では、どのような基準で給与か外注費かを判断するべきでしょうか。その判断の基準としては次のようなものが考えられます。①契約の内容が他人の代替を受け入れるか ②仕事の遂行に当たり指揮監督を受けるか ③成果物の引き渡しが出来ない場合に報酬の請求が出来るか ④材料や作業用具の提供があるか等が総合的に勘案され、判断される事になります。

ざっくりいえば自己の計算と危険において独立して営むのが個人事業主なので、成果物の引き渡しが問題無ければ基本的に何しても自由ですが、勤め人であればそういう訳にもいかないでしょうという事です。

厚生年金基金

厚生年金基金は、老齢厚生年金の給付を基金が代行しつつ、さらに基金独自の給付を上乗せし、加入員の受け取れる年金額を増やすことで、充実した生活保障を達成することを目的として運営されていました。しかし、2020年3月1日現在で存続厚生年金基金は8つとなり、ほとんどの厚生年金基金は解散しています。

平成26年4月に施行された改正厚生年金保険法において、施行日以後の新設が認められなくなり、施行日から5年後以後以降は、代行資産保全の観点から基準を下回る基金については、厚生労働大臣が解散命令を発動できるようにもなりました。

元々、運用により積立金を確保しつつ上乗せ給付を支給するという前提が、経済情勢等から出来ない基金が多くなり、いわゆる厚生年金部分の代行割れが問題となっての事のようです。

解散後の厚生年金基金については、厚生年金基金の給付代行をしない企業年金基金への積立金の移行についての特例が認められており、代行返上して移行している基金も多いようです。

確定給付企業年金制度を採用しており、複数事業主により設立された基金に加入している場合で、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができないときには拠出時に費用計上、そうでない場合は退職給付会計基準に基づき、確定給付制度の会計処理を行います。税務上はいずれの場合も拠出時に損金算入となります。

上場株式の減損

コロナの影響で上場株式の時価は下落していますが、ここで上場株式についての減損処理が必要になる会社も出てきているのでは無いでしょうか。金融商品会計基準によると、時価のある有価証券について、時価が著しく下落した場合は減損処理が必要であり、時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合には「著しく下落した」ときに該当し、合理的な反証が無い限りにおいて、時価が取得原価まで回復する見込みがあるとは認められないため、減損処理を行わなければならないとされています。

一方、税務上で損金算入するには上記おおむね50%の下落に加えて、近い将来その価額の回復が⾒込まれないことが必要となります。(基本通達9-1-7)この点、回復可能性の見込みについて、税務通信の3598号にも出ていましたが、平成21年4月に国税庁から出されたQ&Aにより、監査人のチェック及び、継続適用により回復可能性の判断基準は税務と会計一致でOKとなっています。

つまり、株価が概ね50%を下回る際には、上場企業等であれば金融商品会計の減損処理に従う必要があり、合理的反証が無い限りには回復見込みが無いとされますが、その適用については当然監査人のチェックを受けます。監査人がチェックし、会計上認められた減損処理は近い将来回復見込みが無いものとなり、税務上の要件も満たすという事でしょう。

手当等の所得区分

新型コロナウイルスの影響で実態経済への影響も色濃くなってきていますが、このような状況なので、給与以外に労働者が受け取る所得補償といったものも出てきているかと思います。今回は労働者が受け取る手当等の所得補償についての所得区分、課税対象か否か等についても触れたいと思います。

まず、労基法の休業手当についてですが、労基法の休業手当は通常の給与と同じ扱いとなりますので、課税給与所得になり、雇用保険や健康保険等においても報酬となります。

そして、先日タクシー会社が再雇用の約束をしたうえで解雇し、雇用保険の求職者給付の基本手当を受けて貰うというニュースがありましたが、当該基本手当の受給可否は置いておきますが、この基本手当は非課税所得となります。但し、健康保険の被扶養者の判定における収入には含まれる事になるので注意が必要です。

また、解雇するうえでは30日前の解雇予告かそれをしない場合に解雇予告手当の支払いが必要となりますが、解雇予告手当は退職手当となります。(因みに解雇予告手当不払いによる付加金は一時所得)

その他、会社が倒産してしまった場合に未払賃金の立替払い事業により国から弁済を受けた未払賃金も退職所得となります。

今回の緊急経済対策により、国から現金給付を受けた場合は非課税になるのでしょうか。もし仮に一時所得となったとしても特別控除で50万円までは控除となるのでほとんどの受給者は関係ないと思いますが。

個別評価の貸倒引当金

税務上、平成23年度の税制改正に伴い、貸倒引当金の対象法人が縮小されていますが、資本金が1億円以下の普通法人等は現在も貸倒引当金が税務上認められています。ここで税務上の貸倒引当金は個別評価と一括評価という大きく分けると2つの分類で引当金を計算しますが、今回は個別評価の方に触れたいと思います。

というのも貸倒に係る事案が身近でも発生したからです。現時点ではまだ破産手続き開始の申し立てもしていない状況ですが、今後弁護士に連絡をしてくださいとの連絡が来て確認すると、どうやら破産手続きに向けて動いているようでした。

ここで、個別評価の貸倒引当金については、長期棚上げ基準・実質基準・形式基準がありますが、すでに財務状況等についてはある程度調べはついており、当該事案は貸倒引当金だけを考えればこの後の法的手続きの進行により、形式基準しか考えられない状態です。

つまり、今後事業年度末までに破産手続き申し立てが行われた場合は形式基準(法人税法施行令96条1項)を満たし50%個別引当が可能、もしくは以前にも触れた貸倒損失の事実上の貸倒れを用いての貸倒損失の計上の何れかになると考えられます。

どちらにするかについては要相談ですが、簡易さで言えば形式的な基準に基づくので形式基準での貸倒引当金の方が言うまでも無く簡単で分かりやすいです。また、同時廃止になればすぐに全額法律上の貸倒損失で行けるのですが、管財事件になると考えられるのでそれは難しそうです。

税務調査

税務調査と聞くと正直喜ぶ方はあまりいないかと思いますが、例えば私的な経費を法人の経費として使っていたりするオーナー企業の経営者からすれば、特にひやひやものでは無いでしょうか。ただ、一方で逆に税務調査での指摘により、会社が良い意味で変わるなんて言う事も実際あるのだと思います。

これは世間話で聞いた程度の会社の話ですが、その話に出た会社もオーナー社長の私的な経費が税務調査で問題となったそうです。そうなると、税務署側からすれば、それを役員賞与にして、法人税と社長の所得税の両方をいきたいと考えるのでしょうが、その会社でははっきりとした経緯は良く分からないですが、最終的にお咎め無しとなったとの事です。(因みに恐らくそれは税務署OB税理士先生の力だろうと話しておられました。)

点で見ればその時にお咎め無しで会社としても社長としても良かった一安心、となったのかも知れませんが、その後その時にお咎めなしとなったからか分かりませんが、会社の業績は下がっていく中で私的な経費使用は止まず、会社の業績悪化に拍車を掛けているようです。そんな話を聞いて、そのケースでいえば冒頭の逆パターンになったのでは、と考えてしまいます。

法人の事業の廃止

少子高齢化の進展もあり、後継者がいないために事業廃止を検討されている経営者の方も多いと思いますが、事業を廃止=会社を清算した場合にはどのような課税関係となるのでしょうか。

単純なケース(清算直前の純資産=残余財産の分配額)を想定しますと、例えば設立時から資本金の金額は変わらず、株式は100%社長が持っていた場合に会社を清算すると、残余財産の分配額から資本金の額を控除した額はみなし配当となり、社長の配当所得として課税される事となります。非上場会社の配当所得は、確定申告不要制度の金額を超える場合に総合課税となりますが、みなし配当となる場合にその金額内に収まる事は稀だと思いますので、基本的に累進課税により課税される事となります。

そうすると、 費用を計上して清算直前の純資産を少しでも減らせばみなし配当の額も少なくなりますので所得税は減る事になりますが、1つの方法として役員退職金を貰ってから清算するという形が知れ渡った方法かも知れませんが、有利になる可能性が高い方法としてあります。

この場合、退職金なので当然社長の退職所得となりますが、退職所得は(収入金額-勤続年数に応じた退職所得控除)×1/2で計算されるので、上手く使えば節税して清算する事が出来るのです。

建物と土地の取得

事務所用にと中古物件の建物を土地と共に購入した場合、契約書上では建物と土地の取得価額が分からないケースがあります。まだ消費税額の記載があれば割り返して建物部分の取得価額が算出出来るのですが、それも記載が無く、業者に聞いても分からないとの返答しか貰えないと、当然ながら自分で何とかして分けなければいけません。

この際に、実務上は固定資産税評価額、土地の路線価や周辺相場等を用いて分ける事になると思うのですが、個人的に一番簡単なのは土地と建物の固定資産税の評価額の比率を使う事でしょうか。珍しいですが、建物の築年数が古いケース等では、按分してみると建物なのに少額減価償却資産の特例で全額費用にという事もありました。

因みにですが、付随する費用のうち、不動産取得税や登記に要する費用等は固定資産の取得価額に算入しない事が出来ます(基本通達7-3-3の2)が、仲介手数料や固定資産税精算金は取得価額に含めなければいけません。

確定申告期限延長②

2月28日のブログで個人の確定申告について期限が延長された旨を記載し、その際に法人はどうなんだろうという事も書きましたが、税務通信の3596号でこれについての記事が載っていました。

参議院の予算委員会で公明党の議員さんが国税庁の方に質疑されているようで、結論からいうと法人については一律延長ではなく、個別指定の申請で対応となるようです。つまり、平たく言えば災害その他やむを得ない理由かどうかを事情を聴いて個別に税務署側で判断し、認められれば延長しますよという事になるようです。

所得税については申告する期限が決められており、その期間に特定の箇所に人が殺到する事がある事を考慮しての一律延長である事を考えれば、法人についてはコロナの要因で無理そうやったら申請、相談に来てねという個別対応の中で認めていくという方が良いという判断なのでしょう。