課税文書

印紙税法第3条は、「別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。」となっており、課税文書の作成者は印紙税を納める必要があります。

そして、印紙税法基本通達第44条に「法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。」とあり、ここで課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載とあるので、電子文書にしたら印紙税が不要なのではという話になるのですが、実際国税庁HPの文書回答事例において、注文請書をPDFファイル等の電磁的記録に変換し、電子メールを利用して送信する場合に、「たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならない 」との回答をしているので、紙での契約をせずに電子契約にすることにより印紙税を浮かせることが出来ます。

一方で、電子契約の場合に法的効力を持たせることを考えると、それはそれでお金が掛かるため、結果的にどちらが良いかという話もあります。電子契約にせずとも、例えば請負加工契約を結ぶ際に先に基本契約にて引受数量を記載せずに単価のみ記載しておき、後で別の文書にて加工数量の取り決めをすれば、課税物件表の適用に関する通則4ホ㈡により課税文書である基本契約から単価を引用する事が不可となり、加工数量の取り決め文書については記載金額の無い文書となるため、1つの契約書に纏めてしまうと数万円の印紙が発生するような場合でも印紙代を節約できるようなケースもあるかと思います。

国外所得の計算

外国税額控除の控除限度額は、ざっくり言えばまず「その期の法人税額×その期の法人全体の所得金額における国外所得金額の割合」で計算されます。(その後、地方法人税、地方税の計算を行う。)控除限度額の計算をする際には国外所得を計算する必要があります。

そしてこの国外所得の計算は、租税条約に定める恒久的施設等の国外事業所等からもたらされた国外源泉所得と、人的役務提供事業の対価や外国法人からの利子や配当等その他の国外源泉所得の合計(法人全体の所得の90%が上限)となります。

上記の国外所得計算の過程において国内源泉所得、国外源泉所得それぞれに明確に紐づかない共通費用や負債利子については合理的に按分する必要があります。例えば共通費用については、原則としては個々の業務ごと、費目ごとに按分して所得計算上考慮する事となりますが、全ての共通費用を一括して按分計算する事も認められています。(基本通達16-3-12、16-3-19の3)

改正電子取引情報保存制度

電子取引情報保存制度の改正により、令和4年1月の電子取引からは、 紙出力保存の代替措置は廃止され、原則通り電子データでの保存が義務付けられます。電子データは検索要件等を満たす形で保存する必要があり、満たしていない場合には、青色申告等の承認取消しとなる可能性もあるとのことです。

この電子取引には、例えばメールでやり取りするPDFの請求書等も含まれ、保存する際には少なくとも「取引等の年⽉⽇」、「取引⾦額」、「取引先」により検索できる状態で電⼦データを保存する必要が生じ、受信メールをそのまま保管しておいてそれを持って保存という事にはならないようです。

一方で課税仕入れ等の事実を証する請求書等について、消費税の仕入税額控除を受けるための紙での保存という原則については現状では変わらないですが、電子データのみが提供された場合は例外が認められるやむを得ない理由となるため、わざわざ電子データで保存しているものを印刷して紙で保存する必要までは無いようです。

当該改正について、国税庁に詳細を聞いてみましたが現状はどの程度の水準を満たせば良いのか等についてまだ何も下りて来ていないので現時点では詳細については何とも言えないという事でした。

欠損金の繰越制度

2020年6月19日の「欠損金の繰戻還付」でコロナ特例で繰戻還付の対象企業の範囲が時限的に広がっている旨の記載をしましたが、そもそもの欠損金の繰越制度についての備忘です。

単年度で所得が赤字であった場合でも、翌期以降において所得が黒字であった期において、繰り越された欠損を控除して良いという制度ですが、繰越可能な期限については

  • 平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金⇒9年
  • 平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金⇒10年

となっており、中小法人等以外であれば所得金額の50%しか控除出来ないという制限がありますが、資本金1億円以下の中小法人等(100%子法人等を除く)であればそのような制限は無く控除可能です。

地方税 事業所

本社と異なる市町村に支店や営業所、事務所、店舗を設けた場合には、新たに設置届を都道府県税事務所や市役所等に提出しなければいけません。

上記の届出の提出が必要となる場合としては、①人的設備,②物的設備,③事業の継続性の三要件を満たす場合となります。①については正規従業員以外でもアルバイトやパートの方等が事業所にいれば該当し、②については自己所有か否かは関係無く、賃貸していても事業を行うのに必要な設備があれば該当します。③については2,3ヵ月程度の一時的な事業の用に供される現場事務所等は該当しません。

上記から、例えば多店舗展開での直営店舗の一部がFC店舗へ変更となった場合には、FC店舗の運営法人側での事業所となり、フランチャイザー側では基本的には事業所に該当しなくなると考えられます。

続・市街地価格指数

3月12日に書きました「市街地価格指数」において、取得した時期が遠い過去等の理由で取得価額が分かる資料が無い場合の不動産の取得費を市街地価格指数を用いて計算する手法ですが、その後自分で調べたりベテランの税理士先生に話を聞いたりしてある程度使い方等が分かりましたので不十分かも知れませんが備忘します。

  • 当然の事ながらあくまでまずは当該関連資料(当時の仲介料、借入金関係資料、納税者の手控え等)から実額の把握に努めるのが先
  • 購入当時の固定資産税評価額等他の情報と併せた使い方が基本的に必要であり、市街地価格指数を使って算出した数値をそのまま使うのは無理がある
  • 一般的に昭和時代の固定資産税評価額は実際の時価との乖離額が大きいので注意(時価より相当低い)
  • 他に何も取得についての根拠資料が無くても取得価額について納税者の記憶がある程度あればその補足資料として使える可能性はある
  • 実務的な対応として、推定値を若干保守的(低め)に考慮するのも1つの方策

といった感じでしょうか。

無償減資

コロナの影響により、無償減資を行う会社が増えているようです。無償減資を行う理由としては、マイナスの利益剰余金を補填するいわゆる欠損填補のための減資という点だけでは無く、この際だからという事で新聞に書かれているような税務上のメリットをとるという意味合いも強いのではと思います。減資により、資本金が1億円以下になると、国税(法人税)では15%軽減税率の適用(所得800万円以下)や交際費の800万円までの損金算入が認められる等のメリットがありますが、地方税でも下記のような影響があります。

まず、資本金が1億円超の場合に負担する事になる外形標準課税の適用が無くなります。資本金1億円以下の会社の事業税は(繰越欠損控除後の)課税所得が出ていなければ課税されることは無いのですが、資本金が1億円超の法人は課税所得が出ていなくても、付加価値割や資本割により赤字であっても事業税が発生する事になります。但し、課税所得が多額に発生するような法人では、逆に外形標準課税の対象であった方が有利となる場合もあります。

また、これは単純に資本金のみの金額ではなく、税務上の資本金等の金額と会社法上(会計上)の資本金+資本準備金のいずれか大きい方を基準として使用しますが、地方税の均等割(都道府県民税、市町村民税)も1千万円、1億円、10億円、50億円の各段階で以下か超かによって税額が分かれるので、これも無償減資による欠損填補を行う事により税務上のメリットを受けられることになります。拠点が少ない会社であれば均等割減額のメリットはそれほど影響は大きく無いかも知れませんが、多店舗展開している小売りや飲食店等の多くの市町村をまたがって展開している会社であれば影響は大きくなります。

市街地価格指数

不動産を売却した時に取得費が不明な場合は譲渡収入金額の5%が概算取得費として認められていますが、過去の裁決事例では他のやり方も認められています。

それは、建物は建築物単価を用いて算出しその後減価償却を加味、土地については一般財団法人日本不動産研究所が出版している「市街地価格指数・全国木造建築費指数」という本の統計値を用いて、取得費を当時と現在の価格指数割合を用いて売却価額から推定するという手法です。

平成12年の裁決事例になるようですが、実際に取得に要した金額では無く、あくまで時価相当額になるため、諸々の要因により認められなかった事例もあるようです。確定申告期限が今年も1ヶ月延びたことで、色々考える余裕が出来るのは良いことですが悩ましいところです。

雇用調整助成金の計上時期 改

2020年7月28日に記載しました「雇用調整助成金の計上時期」で、雇用調整助成金の計上時期については原因となった休業の事実があった日の属する事業年度にて、確定していない場合でも助成金を見積って計上という事を記載しました。

しかしながら2月26日に更新された国税庁の「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ 」において、「法人が交付を受ける助成金等の収益計上時期の取扱い」が追加されており、コロナ禍の特例措置による雇用調整助成金に関しては交付決定日の属する事業年度に収益計上するという上記と異なる取り扱いとなる旨が公表されましたので、少し遅くなりましたが記載しました。

FAQによると、「経費を補填するために法令の規定等に基づき交付されるものであり、あらかじめその交付を受けるために必要な手続をしている場合には、その経費が発生した事業年度中に助成金等の交付決定がされていないとしても、その経費と助成金等の収益が対応するように、その助成金等の収益計上時期はその経費が発生した日の属する事業年度として取り扱う」となっています。

つまり、通常の雇調金ではあらかじめ「計画届」の提出の手続をとり,同助成金による補てんを前提に休業手当が支給されることから、休業手当(費用)と雇調金(収益)との時期的対応を図る必要があるが、特例措置により、「計画届」が不要となっているため、原則通り交付決定日の属する事業年度に収益計上することになるという事のようです。

不動産所得 事業的規模

不動産賃貸事業が事業的規模で行われている場合には、最大65万円の青色申告特別控除が受けられたり、未収家賃が貸し倒れた場合に貸倒損失として経費に算入出来たりと特典があります。

ここで、事業的規模については、所得税法基本通達26-9で原則的には社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより実質的に判定すべきであるとされていますが、形式的な基準も設けられており、下記の何れかを満たせば特に反証が無い限り事業として行われているものとするとされています。

(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおお  むね10以上であること。

(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

ここで、事業年度の途中で事業的規模に該当しなくなった場合についても、その年の12月31日まで引き続き事業を行っていることが特別控除65万円(もしくは55万円)の要件では無いため、その年については最大65万円の特別控除を受けることが出来ると考えられます。