B/S(貸借対照表)残高の妥当性

B/S残高の妥当性と表題に記載しましたが、B/Sの科目の残高については、見積等が絡まなければ、いわゆる監査要点でいうところの実在性や網羅性、権利と義務の帰属であったりといったところが一般的に担保されていなければなりません。多くの中小企業会計においても、B/S残高についてある程度定期的な検証を行っていれば上記の点は確認されているかと思います。

しかしながら、P/L(損益計算書)を重視するあまりB/Sを検証していない等、B/Sを軽視する会社は割とあるかと思います。そういった会社は知らず知らずのうちにB/Sが荒れていき、科目残高が妥当と言えるかどうかわからなくなってしまいます。

そうなると、B/Sが合っているのかどうなのかは感覚的なものになってしまいますが、そういった会社では「でもP/Lは確認しているから大丈夫」という答えが返ってきたりします。ここで、配当の支払等を除けば、単純にB/Sの純資産の増加(=資産-負債)がP/Lの利益になる事を考えれば、B/Sが妥当かどうかわからないのにPLの数字が大丈夫と言えるのか甚だ疑問に思います。

持続化給付金調査

今日の新聞記事に持続化給付金の不正調査を開始したという記事が出ていました。制度的にも、対象者を助けるという意味であまり手間がかからずに出来るようにしたのだと思うのですが、確かに申請におけるハードルからしても不正が多発してもおかしくない給付金だろうとは思います。

実際に週刊誌か何かで、不正受給した人のインタビューが載っていたようですが、管轄省庁がそもそもこういった案件に対して調査能力においては省庁の中でトップクラスであろう国税庁(財務省)では無く、中小企業庁(経済産業省)という事もあり、インタビューを受けられた匿名の方は高を括っているようでした。

記事では複数の専従者を配置し、弁護士などの助言を受けながら作業していると載っていましたが、配置された専従者がそういった経験のある国税OBのような方なのか募集して集まったただの素人なのか、どのような人なのか分かりませんが、過去の申告を改ざんして提出し直してまでも受給するような悪質なケースもあるようなので是非とも国税庁と連携して、明らかに怪しいものをどんどん潰して行って欲しいものです。

四半期特有の会計処理(税金)①

四半期決算においては、年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益に当該見積実効税率を乗じて計算する方法によることができ、また、前年度末に計上された繰延税金資産及び繰延税金負債の各四半期毎の見直してにあたっては、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、簡便的な方法によることも認められる。( 四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針第18項 )とされています。

そして、上記の簡便的な方法というのは、経営環境や一時差異等の発生状況等について著しい変化、大幅な変動が無い場合には、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングを利用することができ、 著しい変化、大幅な変動があれば当該影響を加味した将来の業績予測やタックス・プランニングを使用するというものです。 ( 四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針第16項,17項 )

平時であれば、永久差異や税額控除等を考慮した年間の見積実効税率を四半期税前利益に乗ずる形で、割とサクッと四半期の税金計算を行っている会社もあるかと思いますが、今回は監査上の留意事項その6に記載の通り、コロナの影響により著しい変化、大幅な変動が経営環境にも一時差異等にも生じている会社は多いかと思います。そうなるとこの四半期特有の税金計算も、コロナ影響下では平時のようにはいかないでしょう。

コロナ関連での特別損失

4月22日に日本公認会計士協会から、新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その4)が出ていますが、そこでは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために政府や地方自治体による要請や声明等により、被監査企業が店舗の営業を停止又はイベントの開催を中止したときに発生した固定費やイベントの開催の準備及び中止のために直接要した費用及び工場が操業を停止又は縮小したときの異常な操業度の低下による原価への影響について、臨時性があると判断される場合が多く、特別損失の要件を満たしうるものとして取り扱うことが出来るとされています。

3月決算の会社であれば、前期末よりも6月末の1Qにおいて当該特損を計上する会社が多く出そうな気がしますが、既に特別損失として損益計算書に計上している会社もあります。勘定科目としては、「感染症拡大に伴う損失」や「新型コロナウイルス感染症による損失」といった科目名が使われているようです。

但し、留意事項にも記載の通り特別損失に持っていけるのは、あくまで新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための政府や地方自治体による要請や声明等に関連したものである必要があるため、注意が必要です。

助成金申請

小学校休業等対応助成金及び雇用調整助成金の申請をしましたが、その後の状況です。

雇用調整助成金については申請後約2週間程経ちましたが今のところなんの音沙汰も無い状況です。一方で小学校休業等対応助成金については、雇用調整助成金よりも申請が早かった事もあり、一部入金がありました。一部というのは、雇用保険の対象従業員についてのものか対象外の従業員についてのものかによって申請後の手続きの流れが異なるという事と、月を1月毎に区切って申請していたのでそのうちの一部が入金になったという事になります。

しかしながら、最初の申請は申請後2週間位でこちらのミスでの一部不備の電話連絡があり、その後当該連絡に従って対応するも何故か先方の受付窓口(委託業者)の担当が途中で変わったり、前担当から言われた通りに修正したものの、後担当に上手く引き継がれていなかったのか、ごたごたしましたが何とか修正が終わり、今に至ります。

持続化給付金もそうでしたが、入金が先にあって数日後に入金の案内が届くというのは同じようです。入金頂いたものについても入金から数日して案内が届きました。受付窓口をされている業者も申請が膨大でパニックになっているのがやり取りで何となく分かるので、その時は少しいらいらしてしまいましたが、大変だなあと思います。

コロナに伴う融資(同行編)

以前コロナ関係の特別融資枠の話を記載しましたが、今回はコロナ関係の融資に実際に某政府系金融機関に同行させて頂いた事を記載します。実際何回かお伺いさせて頂きましたが、対応は会社の状況によりまちまちでした。

どういう事かというと、コロナが騒がれだす前の業績により先方の融資姿勢が変わってくるという事です。当然なのですが、あくまでコロナにより業績が落ち込んだ(例えば前年同月比で5%売上ダウン)会社を支援するための特別融資なので、コロナ騒動の前に既に落ち込んでいる部分については当該特別貸付は対象とはならない事になり、以前のブログでも触れましたがコロナ終息後の業績回復が描けないといけません。

コロナ前は業績が良かった会社の場合は、基本的な会社概要等の提出以外は基本ヒアリングで先方に状況を伝え、借入の申込というこんな感じでいいの?という程あっさりして1ヶ月程で入金されましたが、業績が元々芳しくない会社の場合には、コロナ終息後の改善した予算及びそれに伴う具体的な改善策や当面の資金繰り資料まで求められました。

先方も無担保無保証でリスクを負う訳なので与信管理をしっかりやるのは当然という事でしょう。

欠損金の繰戻還付

自粛解除となったとはいえ、未だコロナの影響がいつまで続くか分からない中、予算や見通しが固まらず嘆いておられる会社や、コロナさえ無ければ黒字決算となったのにという会社も多いかと思います。

そんな中、コロナの影響でくしくも赤字となった(欠損金が生じた)会社が使える制度として、繰戻還付という制度があります。これは、簡単に言うと当期に発生した欠損金をベースとして前期申告に係る法人税を還付出来るという制度です。

従来であれば資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下等の要件を満たす中小企業者等であれば制度適用が認められましたが、今は時限的にコロナの影響で対象範囲がもっと規模の大きい会社まで及びます。

少しでもキャッシュインが欲しい会社には使える制度なのでは無いでしょうか。但し、事業税等の地方税では適用出来ないので、繰戻還付を行うと国税と地方税の繰越欠損金にずれが生じるので注意が必要です。

消費税の脱税

税務通信3609号の記事にまた消費税の脱税事例が載っています。告発事例として、どうやら3課税期間の消費税4,700万円が無申告だったようです。告発されたのは人材派遣会社のようですが、3期間で4,700万円ということは1期平均1,500~1,600万円でこれを8%で割り返すと約2億円になります。これは課税売上割合を仮に無視すると、課税売上から課税仕入を控除した額が約2億円という事になりますが、人材派遣業なので労働分配率が高く、課税仕入がそれ程ないとしてもそこそこの規模になります。

法人税も同様に無申告だったのかどうかは記載が見当たりませんが、ネットのニュース媒体にもあった記事によると平成21年の設立以来無申告だったとの事です。これくらいの規模の会社で知らなかったという事は無いでしょうから故意に無申告だった可能性が高いと思いますが、同業なのでこういう理由なのでは、と勝手に考えるところでは、人材派遣業の場合、上記の通り労働分配率が高いため、赤字でも消費税の支払が発生することは往々にしてあると思います。ざっくり言えば本来売上で受け取った消費税と経費等で支払った消費税の差額を納める制度になるのですが、いわば預かったお金を後で払う形になるため、赤字で資金繰りも困っているのに消費税は払わないといけないというのが地味にきつかったりするという事は大いにあると思います。

法人税の申告は行っていたのであればもっと早くに指摘を受けていたと考えられますので法人税も申告していなかったのでしょうか。そうだとすると法人税については触れられていなかったので利益(所得)は出ていなかったんでしょうかね。

日経トップリーダー5月号

少し前ですが、日経トップリーダーの5月号の「壁を越えろ」で旭酒造の桜井社長の記事が載っていました。旭酒造といえば獺祭で有名ですが、2018年の西日本豪雨で被災した際の心持ちが書かれていました。何でも、この時は浸水被害の状況を確認し、資金繰りも含めて致命的なダメージは避けられると判断し、出来るだけ慌てず穏やかな姿勢で部下に接する決意をしたとの事です。

これには色々と考えさせられる要素があります。まず被害は大なり小なり受けているため、何より平時から資金繰りが良く無ければ到底それどころでは無くなるであろうという点です。加えて、平時特に資金繰りに気を遣わずとも良い会社は、資金的な余裕から割とルーズな部分が出て来て、いざ有事になったら途端に資金繰りが厳しくなるという事は往々にしてあるかと思います。普段から何か起こっても大丈夫なように財務的にも余裕を持っていたんだろうなという風に思います。

また、あれこれ考えて右往左往するのではなく、慌てず穏やかな姿勢で部下に接するという決意をした点についても、仮にもし自分をその立場に置き換えたらと思うとそんな風に考えらないんじゃないかと思います。従業員の立場からしたら明らかに大変な事になっていても社長が大きく構えていてくれたら、ああ頑張れば大丈夫なんだと安心して復旧に取り組めるんじゃないでしょうか。

こういうのを胆力というのでしょうか。緊急時こそトップの出番、まさしくその通りだと思います。

繰延税金資産の計上②

前回繰延税金資産の計上については回収可能性の観点から特に検討しないといけない旨を記載しました。これについて、繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針という、回収可能性についての指針があるのですが、当該指針では繰延税金資産の計上において、スケジューリングの点や、収益力等の点からの取り扱いについて記載されています。

ここで、当該指針では収益力による課税所得の発生可能性から、分類が1から5まで定められており、例えば分類1であれば繰延税金資産は原則全額回収可能と判断されます。一方で分類5になると「原則として繰延税金資産の回収可能性はないものとする。」と記載されています。

この点、繰延税金資産の回収可能性は原則としてないものとされるのは、分類5については課税所得の発生が見込めないため、将来の税金削減効果は無いでしょという事ですが、前回触れた繰延税金負債の計上がある場合はどうでしょうか。繰延税金負債については、特殊な場合を除き計上が必要となりますが、計上された繰延税金負債のうち、資産除去資産部分は定期的に会計上償却されて、その償却に対して税務上は損金不算入にしますので、資産除去資産についてはスケジューリングが可能になり、将来少なくとも当該取崩しに関しては課税所得が発生する事になると思います。

つまり、分類5のような会社でも、資産除去資産の取崩しにより発生する分の課税所得見合いのスケジューリング可能な繰延税金資産は計上可能で、もしそのような将来減算一時差異が無かったとしても、分類5の会社はそれなりに繰越欠損を有するはずなので、最低でも繰越欠損の期限及び使用制限を考慮したうえでの繰延税金資産については計上可能だと考えます。