日本公認会計士協会から「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項」が現時点でその3まで出されています。4月15日に発出されたその2では、会計上の見積りに関して記載されています。今回はこれについて触れたいと思います。
企業会計において会計上の見積りは避けて通れないものであり、例えば減損会計や税効果会計等は多分に見積の要素が強いものとなります。この会計上の見積りは、ある一定の仮定に基づいて行う事が必要となるのですが、その仮定の設定が平常時では無いこの御時世においては多分に困難が伴う事になります。ざっくりしたところで、将来の業績予想の合理性が一番分かりやすいかも知れません。将来の企業業績が良いと、当然悪いよりも固定資産の回収可能性も増えて減損損失の金額が少なくてすみますし、課税所得も増えるので、繰延税金資産も多く計上出来ますが、将来の業績の結果はその時にならないと分からないため、あくまで今時点では仮定に過ぎません。
しかしながら、この御時世ではコロナがいつ収束するかも分からないため、将来の見通しが非常に立ちづらい状況にあります。そこで、この通達では、設定された仮定が「明らかに不合理である場合」に該当しないことを確かめることになるとしており、「企業の事業活動にマイナスの影響を及ぼす情報及びプラスの影響を及ぼす情報の双方を含む入手可能な偏りのない情報を総合的に評価して、悲観的でもなく、楽観的でもない仮定に基づく企業固有の事情を反映した説明可能な仮定になっていることを検討した上で、会計上の見積りが実施されているかを検討することに留意する必要がある。」という事です。仮定を出来るだけ裏付ける情報を集めて想起される複数シミュレーションをしたりと頑張っても外部環境次第で仮定通りに行かず結果はがらっと変わる可能性は多分にあるため、かなりざっくりいうと頑張って検討するのは当然今まで通りだけど、結果がどう出てもこの御時世仕方ないよねという事なんでしょうかね。