法人税法基本通達2-2-14「短期の前払費用」において、「前払費用の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。」とあり、所得税の基本通達37-30の2においても同様の記載があります。
基本通達に記載の通り、発生主義の観点からも前払費用は通常は支払時に一括して損金算入されるものではなく、費用収益対応の原則から適切な時期に費用計上される類のものです。当該特例はその例外として、継続提供される等質等量のサービスについての簡便的な処理を認めたものであり、適用するにはいくつかの制約があります。
まずは重要性の観点からみて問題ない範囲かという点で、その前払費用が「重要性の原則」から逸脱していないことが適用時の大前提となります。当該重要性は画一的なものではなく、その判断においては金額のみならずその法人の財務内容に占める割合や影響等も含めて総合的に考慮する必要があるとされています。
そして、基本通達にも記載されていますが、処理の継続性が要件として求められます。従来からの経理処理(期間対応)を変更して同特例を適用する場合は、その適用事業年度の前後の事業年度における経理処理の状況や、経理処理の変更を行った「合理的な理由」が必要となります。
この合理的な理由の1つとしては契約に基づく支払方法の変更が例として挙げられます。つまり、月払いだった家賃を年払いに変更した場合等は合理的な理由となりうるとの事です。
節税目的でも行われるこの特例適用ですが、適用においては上記の点に注意が必要となります。